バルト三国のうちの一つであるエストニア。同国はこれまで、電子行政プラットフォームを外国に開放することでオンライン上の法人設立を可能にした「e-Residencyプログラム」や、「Skype」や「Transferwise」といったエストニア発のIT関連企業の存在も手伝い、“電子国家”、“スタートアップ企業支援国家”として脚光を浴びてきた。
しかし、それだけではない。たとえば首都タリンでは、公共交通機関(バス・路面電車)の無償化など、コンパクトシティ化に向けた取り組みが積極的に行われている。さらに現地発のライドシェアリングサービス「Bolt」の台頭や、自動運転バスの試験導入も進んでいる。大学、民間企業の参入もあって、国民の「移動体験」が、今めざましく変化しているのだ。
本記事では、そんなエストニアにおける交通網の発達に着目し、その取り組みの一端を紹介する。
市民用のICカードを使えば公共交通機関が無料に
エストニアの首都・タリンでは、市民に対して、公共交通機関が無償で提供されている。電子IDと紐付けされたICカードを車内の機械にかざすことで、タリン市民として識別され、無料で乗車できるという仕組みだ。
2013年の公共交通無償化以降、タリンの人口は40万人から6年で約2万人増加。人口増に伴って、税収も著しく増加した。エストニアの公共交通は、その財源を税金や補助金によって賄っている。公共交通そのものの仕組みと当局の政策が上手く噛み合ったユースケースと言えるだろう。
エストニア政府は、タリンで働きながら別の地域に居住している人々の利便性も考え、タリン市内の公共交通機関を、タリン市民だけでなくエストニア国民全員に対して無償化することを検討している。

エストニア版Uber? 「Bolt」の台頭
エストニアはその小さい経済規模をよそに、多くのユニコーン企業を輩出していることでも有名だ。そのうちの一つがライドシェアリングサービス「Bolt」。今やバルト三国以外に東欧、アフリカなど30ヶ国の100を超える都市でサービスを展開している。
数あるライドシェアサービスの中でBoltが特徴的なのは、… 続きを読む