本年2月に公開されたITIL4について、ITILエキスパート有資格を対象とした移行研修・試験(MP Transition)の内容が先日公開されました。これによって、ITIL4が目指しているITサービスマネジメントの全容がほぼ明らかになりました。
今回は、この内容をもとに、ITIL4が目指している「新しいITサービスマネジメントの在り方」を掘り下げていきます。
ITIL3→4で、「価値の提供」から「価値の共創」へ変わる
前回の記事でも触れましたが、ITILバージョン3とITIL4の相違点のひとつが、サービスの位置づけが「価値提供」から「価値共創」へ変わったことです。
つまり、バージョン3では「ITサービスマネジメントは、ビジネス(ITサービス利用者)側の要求にあったサービスを提供していくためのもの」という位置づけでしたが、ITIL4では「ITサービスマネジメントは、ビジネスとITが一緒に価値を作っていくためのもの」という位置づけに変わったのです。
なぜこのように位置づけが変化したのか、具体例で説明します。
これまでのITは、ビジネスがその顧客に対して、製品・サービスを提供する業務をおこなうための「支援」をするという位置づけでした。基幹業務システム、会計システムなどが分かりやすい例かと思います。
しかし現在では、ビジネスがその顧客との取引を、ITにより行うことが一般的になっています。誰でも思い浮かぶ例として、電子メールやWebサービスを通じての受発注などがありますが、最近はいわゆるスマホアプリで完結する業務も増えつつあります。例えば、タクシーの配車サービス、スマホ決済サービス、ハンバーガーチェーン店が最近はじめたモバイルオーダーサービスなどがあります。
これらのサービスを設計・運用するためには、「ビジネスが定義した要件をITが実現する」という仕事の分け方では実現困難です。ビジネス・ITが一緒になってどうすれば実現できるか、どうすればサービス消費者にとって使いやすく、快適なサービスを提供できるかを考えていく必要があります。そのために、価値提供から価値共創という位置づけに変化したわけです。
今後のITサービスマネジメントに求められる人材とは?
では、価値共創を実現していくための今後のITサービスマネジメントには、どのような能力・スキルが必要となってくるでしょうか?
ITIL4では、これまでのITの役割は「技術」にフォーカスしたものだったが、今後は… 続きを読む