2018.10.16 Tue

 激化する国際競争を勝ち抜くために、多くの企業がイノベーション創出に向けた研究開発に注力しています。研究開発を担う人材の確保・育成は、将来的な事業を躍進させる重要なミッションの1つといえるでしょう。

 道路建設の調査から設計、材料、施工までを行うニチレキ株式会社は、アスファルト乳剤など舗装材料の分野で国内トップシェアの実績があります。同社で道路建設の国家プロジェクトに関わり、数多くの試練を乗り越えてきた技術研究所長の羽入昭吉氏の足跡をたどり、イノベーションの生み出し方や研究開発人材の育て方のヒントを探っていきます。

 

常識の枠内でイノベーションは絶対に生まれない

 研究者としての羽入氏の原点は、幼いころにテレビで放送されたロボットアニメ『鉄腕アトム』にあります。

「毎週、放送を楽しみにしていました。夢中になったのは主人公のロボットではなく、ロボットをつくる科学者のほうです。小学校の卒業文集に『50年後は科学者になっている』と書いており、子どものころから誰もやっていないことに挑戦したいと思っていました」

 科学者を夢見ていた少年は成長し、工学系の大学で道路舗装について学びます。卒業後、多くの同級生がゼネコンや官庁などに就職するなか、羽入氏は教授の強い勧めでニチレキ株式会社への入社を決めます。

「教授に『真似をする対象が無い、全く新しい材料の開発に特化した会社だから、君に向いている』と言われ、軽いノリで入社しました」

入社後に配属された研究所では、一般的な舗装用石油アスファルトにポリマーなどを加えて耐久性などを向上する「改質アスファルト」の研究開発に従事します。実験室で改質アスファルトの材料選びや設計などを繰り返す研究者に転機が訪れたのは、入社から1年後のこと。この年、本州四国連絡橋の本格的な舗装工事がスタートします。

「橋の道路に、従来のアスファルトの約100倍の疲労寿命を持つニチレキの改質アスファルトが採用されました。この製品の製造担当者として現場に出向くことになりました」

 羽入氏は、毎日のように実験室で試作を重ねてきたことから、このミッションは容易だと考えていました。ところが、現場の姫路工場にある大きな製造釜ではうまく製造ができないというトラブルが発生します。その原因は、実験室と現場の設備のスケールの違いにありました。

「実験室と同じ条件にするため、現場の設備を改造する必要があると工場のベテランスタッフに説明するのですが、若手社員の言葉には誰も耳を傾けてくれませんでした」

 そこで、羽入氏は… 続きを読む

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Bizコンパス編集部

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