多くの企業で、経営の根幹を支える基幹業務システムを、クラウドサービスへ移行する動きが拡がっています。高度なセキュリティや可用性を求められる銀行のシステムでさえ、クラウドサービスを利用する取り組みがすすんでいます。

 日本政府も、クラウドを積極的に推進する方針のようです。2018年6月7日、政府は「第77回各府省庁情報化統括責任者(CIO)連絡会議」を開催。そこで発表された「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」では、政府情報システムは「クラウド・バイ・デフォルト原則(バイ・デフォルト[by default]とは「既定では」という意味)」とし、クラウド・サービスの利用を第一候補として検討を行うものとしています。

 一方で、クラウドに疑問を持つ人もいらっしゃるようです。それは、「クラウドを入れても運用は変わらない」、「クラウドはセキュリティが心配」、「クラウドを入れてもコストは安くならない」といったようなことです。これらを理由に、クラウドの導入を頑なに拒んでいる企業も存在します。

 こうしたクラウド・サービス(パブリック・クラウドのこと。以降、断らない限り「クラウド」と表記)へのマイナスイメージは、果たして本当なのでしょうか。この連載では、先に挙げたクラウドへの疑問と現実とのギャップを、3回に分けて埋めていこうと思います。初回は、「『クラウドを入れても運用は変わらない』は本当なのか?」を考えます。

 

システムの所有は、ビジネスの成果を阻害する

「クラウドに移行しても、調達の手段が変わるだけ。自分たちのやることは、実質自社で所有する場合と変わらない。だから、別にクラウドにする必要はない」

 情報システムに関わる人の中には、こんな疑問を持つ人もいらっしゃるでしょう。しかし、その疑問は本当なのでしょうか。

 これまで多くの企業では、自分たちでコンピュータを所有することが当たり前でした。資産として所有する場合には、それを一定期間かけて減価償却しなければなりません。また、リースとして使用する場合にも、一定期間は使用料金を払い続けなくてはなりません。その期間は、サーバと言われる業務システムの受け皿となるコンピュータの場合、5年間が一般的です。

 5年も経てば、技術革新もあって陳腐化がすすみます。中にはその間にメーカーのサポートもなくなってしまう場合もあります。そのため、5年間程度を目安に、新しいコンピュータに入れ替えるのは、多くの企業で慣例となっていました。

 しかし、コンピュータを入れ替えるとなると、… 続きを読む

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斎藤昌義

斎藤昌義

ネットコマース株式会社代表取締役

1982年、日本IBMに入社、営業として一部上場の電気電子関連企業を担当。その後営業企画部門に在籍した後、同社を退職。1995年、ネットコマース株式会社を設立、代表取締役に就任。産学連携事業やベンチャー企業の立ち上げのプロデュース、大手ITソリューション・ベンダーの事業戦略の策定、営業組織の改革支援、人材育成やビジネス・コーチング、ユーザー企業の情報システムの企画・戦略の策定などに従事。

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