企業で取り組んだ新規サービス検討プロジェクトが、大成功を収めたとします。生まれたデジタルビジネスが世の中で評判になれば、経営陣からもお褒めの言葉をいただくことになるでしょう。

 しかし、実はこの成功の直後にこそ、大きな罠が待ち受けているのです。

 それは、このようなイノベーション創出活動が、一度きりの取り組みとなり「継続されない」ことです。プロジェクトが完了した瞬間にメンバーは解散し、蓄積された経験も足元の仕事の忙しさの中でいつの間にか風化してしまうことはよく見受けられる光景なのです。

 あたりまえなのですが「プロジェクト」と名づけられた以上、この活動自体が企業にとって期間限定で位置づけられていることは間違いありません。ただ一度であれば、特定の優秀なメンバーの頑張りや、将来を見通せる管理者の支援のおかげでうまくいくことはありますが、彼らがいなくなった瞬間に活動継続の目はなくなってしまうのです。

 デジタル技術によってビジネスを生み出すことが容易になったということは、すばらしいサービスを編み出したとしても、その寿命が短いことを意味します。極めて短時間で先行優位はなくなり、競合サービスがどんどん出てきます。今後企業が競争力を維持していくためには、継続的にイノベーションを起こし続けることが必要不可欠になるということなのです。一度の成功で満足してもしかたがないのです。

 

新規サービスの検討を、正式な業務として組み込む

 必要なのは、新規サービス検討というイノベーション活動を、組織の業務プロセスの中に組み込むことです。正式な「仕組み」として位置づけることによって、一過性ではなく継続的に実施していくことを担保するのです。誰かが音頭を取らないと始まらないのではなく、組織としてその活動の必要性を明らかにした上で、標準的なプロセスを設計し、これを推進することを義務づけるわけです。

 イノベーション活動を仕組みにする場合、いくつかのパターンがあります。

 ひとつは、「新規サービス検討のための専門組織」をつくることです。この場合は、社内外から必要なスキルを持った人材を集めることも視野に入ります。

「アイディア公募制度」を導入することもオプションのひとつです。これは社内のあらゆるメンバーを対象に、新しいサービスアイディアを定期的に募っていくものです。会社全体としてイノベーションに取り組む雰囲気を醸成するためには有効です。また、現場でメンバーが日常的に感じていること、お客様とのやり取りの中から広くアイディアを見出すためにはよい仕組みだと言えるでしょう。それぞれに特徴がありますので、企業の状況に応じて選択していくことになります。

 

新規ビジネスは既存ビジネスと切りはなす

 見出されたサービスアイディアを健全に育てていくためには、従来から行われてきたビジネスとは可能な限り切りはなすような仕組みが必要になります。

 アイディアの進捗管理には、技術開発でよく行われている「ステージゲート法」を用いることが多いです。これは、アイディア創出から実際の事業化までのプロセスを複数のステージに分割し、ステージとステージの間にゲート(関門)を設ける手法です。各ゲートには個別に評価基準が設けられ、これをクリアすると次のステージに進めるわけです。

 重要なのは… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

三谷 慶一郎

三谷 慶一郎

株式会社NTTデータ経営研究所 研究理事 情報戦略事業本部長 兼 デジタルビジネスデザインセンター長

企業や行政機関における情報戦略立案や情報システム企画に関するプロジェクトを実施。近年はデジタルビジネスに関する調査やコンサルティングを推進している。博士(経営学)。武蔵野大学国際総合研究所客員教授、情報社会学会理事。近著に「ITエンジニアのための体感してわかるデザイン思考」(日経BP)など

関連キーワード

連載記事