デジタルビジネスに限らず、新規事業や新しいサービスの検討に参加する機会は、どんな企業においても、それなりにあるのではないでしょうか。

 経営陣が変わり「これからはイノベーションだ」との号令によって新しい専門組織が作られたり、全員経営参画のかけ声のもとたくさんのワーキンググループが立ち上がったりすることはよくあります。アイディア創発を目的とした公募制度がつくられることも珍しくありません。

 しかしどんなアプローチを取るにせよ、期待にかなう成果はそう簡単には生まれないようです。フレッシュな若手を集めても、多くの知見を持つベテランを集めても、なかなかうまくはいきません。せっかくの取り組みも時間とともに参加者のモチベーションは下がり、目の前にある仕事の忙しさを理由に自然消滅してしまう、そんなことをよく見かけます。

 このような悩みを解決するための突破口として「社外の人を巻き込み、一緒に新しいことを創造すること」をお勧めしたいと思います。いわゆる「共創」の推進です。特にデジタルビジネスの創出においては、共創活動は想像以上に大きなポテンシャルを持っています。

 

なぜ社内メンバーだけではダメか

「共創」をするためには、社内ではなく、社外の人を巻き込むことが重要になります。なぜ、社内のメンバーによる検討だけではうまくいかないのか。まずはこのことから述べていきます。

 日本企業の多くは、「タテ組織」という特色を持っていると言われています。「タテ組織」とは、所属している組織における上司と部下、あるいは先輩と後輩といったタテのつながりを強く意識した構造を持つ組織のことです。

 階層構造を持つ組織形態で、新卒横並びで入社をさせ、年功序列を重視した評価をし、終身雇用を前提としてキャリアチェンジをあまり推奨しない雇用環境を作ります。これによって、仲間意識を強くし、組織としての求心力を強化し、安定的な組織力を維持することを目指します。最近は多少緩くなってはいますがまだまだ日本企業のDNAにはこの考え方が残っています(詳細は、ロングセラーである中根千枝氏の「タテ社会の人間関係‐単一社会の理論」を参照して下さい)。

 右肩上がりの成長をつづけていたこれまでの工業化社会においては、経営は各組織に、特定機能を与え、それを徹底的に効率化することを望みました。タテ組織の持つ集団結束力の強さや、人材の固定化を前提として暗黙知が、そのまま永続的な成果につながっていく仕組みは、見事にこの要求に応えていたといえます。

 しかし、従来日本の強みだったこの組織特性が、「新しい事業を考えていく」というミッションに対しては完全に障害になってしまうのです。… 続きを読む

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三谷 慶一郎

三谷 慶一郎

株式会社NTTデータ経営研究所 研究理事 情報戦略事業本部長 兼 デジタルビジネスデザインセンター長

企業や行政機関における情報戦略立案や情報システム企画に関するプロジェクトを実施。近年はデジタルビジネスに関する調査やコンサルティングを推進している。博士(経営学)。武蔵野大学国際総合研究所客員教授、情報社会学会理事。近著に「ITエンジニアのための体感してわかるデザイン思考」(日経BP)など

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