2018.03.26 Mon
2018年5月25日、EU(欧州連合)は「EU一般データ保護規則(GDPR)」という個人情報保護法を施行する。EU居住者の個人データを処理・保持する組織すべてが対象になるため、日本の企業も無関係ではない。違反した場合、莫大な制裁金を支払わなければいけないケースもある。
先日公開した前編では、GDPRの基本的なルールや、“こんなことまでルール違反になる”といったケースについて紹介した。しかし、そもそもなぜEUは、ここまで厳しい個人情報保護法を導入するに至ったのだろうか。
後編では、GDPRをはじめとする個人情報保護法がなぜ存在するのか。そして、なぜ厳しい罰則が用意されているのか。日本における個人保護の実状を踏まえながら、GDPRが成立する背景を考えてみる。
個人情報の利用は日々拡大している
日本で個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めた法律が、略称「個人情報保護法」、正式名称は「個人情報の保護に関する法律」である。
同法が成立した背景には、条文に倣った表現を用いると、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大している点がある。
この個人情報保護法が施行された前年の2004年に、大手通信事業者において450万人にものぼる個人情報の漏洩事件が発生した。その後、お詫びとして500円相当の金券が送付され、お詫びの相場を作ることとなった事件と言われれば、思い出す人も多いのではないだろうか。
時期的にも重なるため、この事件の影響で成立した法律だと考える人も多いようだが、実際には更に1年遡った2003年に、既にこの法律は成立している。
同法が成立に至った経緯を、衆議院憲法調査会事務局が2003年に発行した「知る権利・アクセス権とプライバシー権に関する基礎的資料」より紐解いてみる。同資料の78ページに、個人情報保護法制化の背景として、いくつかの事例が述べられている。その中の一つに、1995年に欧州連合で採択された「EUデータ保護指令(Directive 95/46/EC)」に対して、日本としても何らかの対応が必要であると認識させるに到った、とされている。
そして、この「EUデータ保護指令」から置き換えられる形で、この5月25日より適用が開始されるのがGDPRである。
サイバー攻撃を受けた場合、企業は個人に報告しなければいけない
GDPRは一種の個人情報保護法であるものの、本質的には、EU法体系の根幹をなす「EU基本権憲章」において保障されている、基本的人権の保護を目的とした規則である。
そのため、「すべての人のデータに等しく価値がある」との考えから、大企業だけではなく、零細・中小企業など組織の規模を問わず対象とされていることが一つのポイントと言える。
GDPRの成立に際し、その動向に注目が集まったのが、… 続きを読む
連載記事
- 前編 制裁金26億円!?EUの個人情報保護法にどう対応する?2018.03.19 Mon
- 後編 なぜEUは、厳しい個人情報保護法を採用したのか?2018.03.26 Mon

足立 照嘉
サイバーセキュリティ専門家、投資家
国内外のIT企業の起ち上げから経営まで幅広く参画。千葉大学大学院在籍中に、IT系の事業会社を設立して以降、ニューヨークをはじめ、ロンドンやシンガポールを拠点に、2017年現在、30カ国以上で事業を展開。取引先には、Fortune Global 500にランクするような有名企業も多く含まれる。実地での経験も豊富で、サイバーセキュリティとサイバー攻撃に関して詳しい。著書に「サイバー犯罪入門 国もマネーも乗っ取られる衝撃の現実」(幻冬舎新書)。
関連ジャンル記事
- 経営者が知っておきたいビジネス理論入門(第39回)競争激化!スマホショッピング市場を制する企業は?2015.05.29 Fri
- ビジネス界の巨匠が説く経営成功の方程式(第3回)経営の神様、松下幸之助の「人をつくる経営」の真意2016.03.01 Tue
- 日本を支えた“中間管理職”の苦悩(第4回)「嫌われる勇気」で大事を成した中間管理職・勝海舟2016.07.27 Wed
- 海外発!見方が変わる仕事との向き合い方(第13回)心も身体も健康に!メンタルヘルスの改善法2014.08.02 Sat
- 今のうちに乗っておきたい!消えゆく寝台列車(第1回)新幹線開業で廃止の噂も!?「北斗星」「カシオペア」2014.05.14 Wed
ランキング
04月27日 集計- 前日ランキング
- 週間ランキング
- 2018.03.08
- サイトメンテナンス【終日】のお知らせ 2018年3月23日(金)
- 2018.02.07
- サイトメンテナンスのお知らせ 2018年2月9日(金)
- 2017.02.28
- 株式会社クレディセゾン 林野 宏 代表取締役社長のサイン入り書籍プレゼント