大企業が新規事業を成功させるには、3つのジレンマを乗り越えなければなりません。その3つとは、(1)既存事業が優先される「組織」のジレンマ、(2)起業家人材を集められない「人事」のジレンマ、(2)投資家がリスクの高い投資を避ける「資本」のジレンマです。
これらのジレンマを解決するには、トップのかけ声だけではなく、関係者の利害関係に配慮したきめ細やかな施策が求められますが、それでは、現場ではどこから手を付ければよいのでしょうか。今回は、過去の連載の総括として、5つのステップで明日から着手すべきアクションプランをご紹介します。
ステップ1:新規事業を阻害しているジレンマを社内で共有する
まず着手すべきは、新規事業を阻害しているジレンマを社内で共有することです。同じ組織にいても立場によってジレンマの感じ方が異なる場合も多く、お互いに情報共有することで、新たな発見があります。
たとえば、経営者は新規事業への挑戦者がいないことが問題とする一方で、現場は予算必達のプレッシャーで、余計なことにリソースを割けない状況こそ問題と感じているかもしれません。また、どの部門に聞いても「部門横断で取り組むべき」という認識があるにも関わらず、誰も隣の部門に口を出すことができず、結局何も動いていないことも少なくありません。
こうして様々な立場の声を集めると、自社にとって障害となっている大企業のジレンマが見えてきます。ここで大事なことは、大企業のジレンマは、全体最適と部分最適のギャップによる問題であり、誰かの責任にして済む問題ではないことです。個々人の本音を聞き出すことと、問題のありかを考えることは、明確に区別して進めることが必要です。
ステップ2:解決しやすいジレンマに着手し、目に見える成果を出す
大企業のジレンマを解決するには、全体最適の観点で「組織」・「人事」・「資本」のあり方を見直す必要があるため、個々の利害損得から見ると、受け入れ難いことも生じます。会社全体を良くするという正論から見れば、小さい話に感じられるかもしれませんが、既存事業を支える功労者ほど、自分のリソースが減ったり、新規事業が特別扱いされることに納得しづらいのが道理です。
そこで解決に着手する際には、最も解決しやすいジレンマから着手し、会社全体が良くなっているという目に見える成果(クイックヒット)を出すことが重要です。たとえば、… 続きを読む