第二次世界大戦の最中、アメリカの諜報機関が、あるスパイ工作マニュアルを作成しました。それは、敵組織に侵入して、生産性を低下させるための「サボタージュマニュアル」です。
サボタージュとは“仕事を怠けること”という意味で、要は「サボりマニュアル」ということになります。サボりといっても、あからさまに怠けるというわけではありません。一見すると、組織のために働いているように見えても、実は生産性を低下させて、組織を内部崩壊に導くという、手の込んだ手法です。
つまり、このサボりマニュアルに記載されていることが自社でまかり通っているのであれば、会社の未来は危ないかもしれません。一方で、サボりマニュアルに記されていることをしなければ、会社の生産性は向上することになります。
本連載では、このサボりマニュアルを反面教師に、どうすれば組織の生産性がダウンすることを防げるかを考えていきます。
CIAが作った、敵組織を骨抜きにするマニュアルとは
アメリカ合衆国には、選りすぐりのエリートが集まって情報収集活動などを行う組織「CIA」(Central Intelligence Agency)があります。このCIAの前身となる組織が、第二次世界大戦中に諜報活動を行っていた「OSS」(戦略情報局/Office of Strategic Services)、です。
諜報活動とは、つまりスパイ工作活動のこと。情報収集や情報かく乱、プロパガンダ工作など、あらゆるスパイ活動を駆使して、敵国を弱体化させることが、このOSSの目的です。
OSSが作成した資料のひとつに、「Simple Sabotage Field Manual」というものがあります。ここに、組織を内部崩壊させる「サボり」のマニュアルが記載されているのです。
OSSはなぜ、このようなマニュアルを作成したのでしょうか?その狙いは、敵組織の「内部崩壊」にあります。戦時中は、多くの企業が戦争に協力し、物資の供給や武器の製造などを行ってきました。このサボりマニュアルには、こうした生産活動を行う敵組織に入り込み、内部崩壊させるためのさまざまな工作手段が記されています。
今回はその中から、「会議」における組織の破壊工作術を紹介しましょう。
こんな会議をやっている組織は内部からダメになる
サボりマニュアルでは、会議の場を利用した組織を内部崩壊させる工作が、8カ条にわたって挙げられています。少し長くなりますが、その8カ条を見てみましょう。
第1条:何事をするにも「決められた手順」を踏む必要がある、と主張せよ。迅速な決断をするための簡略化した手続きを認めるな。
第2条:「演説」せよ。できるだけ頻繁に、延々と話せ。長い逸話や個人的な経験を持ちだして、自分の「論点」を説明せよ。適宜「愛国心」に満ちた話しを入れることをためらうな。
第3条:「さらなる調査と検討」のために、すべての事柄を委員会に委ねろ。委員会はできるだけ大人数とせよ(決して5人以下にしてはならない)。
第4条:できるだけ頻繁に… 続きを読む