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五代友厚はなぜ中間管理職から「大阪の父」になれたのか
2019.03.28

日本を支えた“中間管理職”の苦悩第36回

五代友厚はなぜ中間管理職から「大阪の父」になれたのか

著者 かみゆ歴史編集部

 NHKの朝の顔といえる帯ドラマ・連続テレビ小説が、4月放送開始の「なつぞら」で通算100作目を迎えるが、同枠で今世紀に入ってから、最高平均視聴率を保持しているのが、2015年放送の「あさが来た」である(23.5%)。波瑠が演じるヒロイン・白岡あさのモデルは、大同生命や日本女子大学の創設者・広岡浅子。時代設定が幕末から大正時代のため、大久保利通や大隈重信など明治維新期に活躍した幕末志士たちも物語に関わった。

 中でも重要な役割を果たす実在の人物が、ディーン・フジオカ演じる五代友厚である。第1週から登場し、明治維新後に病死するまでの長きに渡り、あさにビジネスのアドバイスを与えてサポートし続けた。この作品の友厚は大変な人気を博し、出番終了後は「五代ロス」を嘆くファンが続出した。

 友厚は「大阪経済の父」と呼ばれるほど、大阪の街の発展に貢献した実業家であるが、もともとは薩摩藩(現・鹿児島県)の出身であり、明治新政府では現在の外務次官に相当する外国事務掛を務めた。人生の半ばまでは、いわば“中間管理職”のようなキャリアを歩んできたのである。

 友厚はなぜ中間管理職という安定したポジションを捨て、リスクの高い実業家として生きる道を選んだのだろうか。

 

世界地図を眺めていた薩摩隼人

 友厚は、薩摩藩の記録製作や外交貿易を担当する五代秀堯(ひでたか)の次男として誕生した。友厚が14歳の時、秀堯は薩摩藩主・島津斉彬に命じられた世界地図の模写を任され、2枚を製作して1枚を斉彬に献上、もう1枚を自室に掲示したという。友厚はその地図を毎日眺め、さらにその地図を参考に地球儀を自作して、世界への夢を膨らませた。

 その憧憬は、江戸幕府が設立した海軍士官学校・長崎海軍伝習所で、より明確な指針につながる。藩に選抜されて入学した21歳の友厚は、ここで後に明治維新の中核を担う幕臣の勝海舟や榎本武揚と共に学んだ。卒業後も藩の外交担当となって、通算10年以上長崎に滞在し、坂本龍馬、高杉晋作、桂小五郎、さらにはイギリスの武器商人トーマス・グラバーなど、明治維新に欠かせない人物と交流を深めた。この結果、日本は世界の中の一国であるというグローバルな視野を得て、これからは外交や外国文化の取り込みが重要と考えるようになった。

 この頃、薩摩藩はイギリスとの間に重大な外交問題を発生させていた。武蔵生麦村(現・神奈川県横浜市鶴見区)にて、江戸出張の帰路についた薩摩藩の実力者・島津久光の行列を乱したイギリス人4名が、激怒した久光の従者に殺傷される事件が勃発(生麦事件)。この損害賠償を求めるイギリスが薩摩藩に軍艦を送り込み、薩英戦争へと発展したのである。

 友厚は薩英戦争の際に帰藩し、藩所有の軍艦を守ろうとした。しかし、沈没させられて捕虜となる。戦いは和睦で決着し、釈放されるも、藩内では「(友厚は)おめおめと生き延びた」という悪評が立つ。友厚は薩摩藩に戻れず、潜伏生活を余儀なくされる。

 

潜伏生活からヨーロッパと渡り合う外交官へ

 だが、この経験が後の成功につながる。… 続きを読む… 続きを読む

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かみゆ歴史編集部

かみゆ歴史編集部

歴史コンテンツメーカー

歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史・世界史全般、アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『日本の山城100名城』(洋泉社)、『一度は行きたい日本の美城』(学研)、『戦国合戦パノラマ図鑑』(ポプラ社)、『系図でたどる日本の名家・名門』(宝島社)、『大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)、『国分寺を歩く』(イカロス出版)など多数。お城イベントプロジェクト「城フェス」の企画・運営、アプリ「戦国武将占い」の企画・開発なども行う。公式サイトはwww.camiyu.jp

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