企業のための「強み革命」(第4回)

部下がリーダーに求める「4つの欲求」とは何か?

2016.06.22 Wed連載バックナンバー

 これまで、数多くのリーダーシップの研究が行われてきたものの、その多くが「リーダーとはこうあるべき」という論調だった。しかし、そのリーダーに部下がいなければ、そもそも組織として成り立たない。

 どれだけそのリーダーが優れたスキルの持ち主だったとしても、部下がそのリーダーの元に集うことを拒絶すれば、チームとして大きな結果を出すことはできない。逆に、そのリーダーの元に優れたスキルの部下が集い、よく働くことができれば、チームとして大きな成果が挙げられるだろう。

 部下を惹きつけるリーダーと部下に嫌われるリーダー。両者の間には、部下が抱く “あること”を意識しているかいないかという違いがあることを、アメリカのビジネス書『さあ、リーダーの才能に目覚めよう ストレングスリーダーシップ』(日本経済新聞出版社刊、トム・ラス著、バリー・コンチー著)は指摘している。その“あること”とは何か? 同書の中から読み解いてみよう。

 

部下がリーダーに求めている4つのニーズとは?

 アメリカの調査会社・ギャラップ社は、2005年から2008年にかけて、1万人以上のフォロワー(チームメンバー、部下のことを本書ではこう呼んでいる)に対して調査を行った。調査内容は「ポジティブな影響を与えてくれているリーダーを思い浮かべて、その人があなたの人生に与えてくれているものについて、最もよく表している単語を3つ挙げる」というものだ。

 得られた回答を分析したところ、フォロワーが自分の人生に最も大きな影響を与えているリーダーに期待し求めているものは、主に「信頼」「思いやり」「安定」「希望」の4つであることが浮き彫りとなった。

 つまり、部下にとって理想的なリーダーは、「信頼」「思いやり」「安定」「希望」を与える人物ということになり、裏返せば部下にとって最悪なリーダーは「信頼できない」「思いやりがない」「不安定」「希望が持てない」ということになる。

 

一見手間のかかる部下への気遣いが、結果的に効率化を生む

 この4つの要素の中から、まずは「信頼」にスポットを当ててみよう。ギャラップ社の調査によると、会社のリーダーたちを信頼していない場合、従業員が仕事に熱意を抱く確率はわずか12分の1とのこと。これに対し、会社の経営陣を信頼している場合は、その見込みが2分の1以上になるという。つまり、信頼していないないときの6倍以上になる。

 確かに信頼の有無は、仕事の効率に多大な影響を及ぼす。信頼関係のないリーダーから仕事の指示を受けた場合、どのくらいのレベルで仕事をこなせば良いのか、求めるものについて慎重に見極めるためのコストが発生する。毎回ゼロから仕事をはじめなければならず、チームとしてのパフォーマンスを向上させることは難しい。

 しかし一度信頼関係が構築されたならば、効率性は一気に向上する。リーダーは「あいつならこれくらいはやってくれるだろう」、部下は「あの人ならこういう答えを求めているはずだ」と互いに意識があっているため、すぐに仕事の核心に入ることができる。もちろん、ムダな社交辞令を使う手間もない。

 次に「思いやり」である。リーダーは立場上、効率化を目指すことを役割として課せられているため、部下を気遣ったり、心から思いやるという、手間のかかる作業をためらってしまいがちである。

 しかし実際には、この一見手間のかかる作業が、効率化を生む。本書によると、「上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれている」と感じている人は、「現在の企業にとどまる可能性がきわめて高い」「かかわりの深い顧客が大勢いる」「生産性が著しく高い」「より多くの利益を企業にもたらしている」という特徴があるという。

 

「毎月、給料と仕事がある」ことは何よりも大事

 3つ目の「安定」も、部下たちは必要としている。リーダーの下でしっかりと自らの役割を果たしたいと考えている人は、その役割を果たすための、安定した、ゆるぎない基盤が欲しいのだ。

 ここでいうゆるぎない基盤とは、簡単にいえば「毎月、給料と仕事がある」という状態である。その安定した基盤があって初めて、リーダーについて行き、熱意をもって仕事に打ち込むことができるのである。

 ギャラップ社の調べによると、「会社の将来的な見通しに大いに自信を持っている従業員が仕事に熱意を抱く確率は、あまり自信を持っていない従業員の実に9倍にもなる」という。

 最後に残された「希望」は、ぼんやりとしているものの、無いと確実に悪影響を及ぼしてしまうものである。

 ギャラップ社の調査で、従業員に対し「会社の経営陣は将来に希望を抱かせてくれますか」という質問が行われ、この質問に強く同意した従業員のうち69パーセントが、「自分の仕事に熱意を抱いている」と回答したという。一方で、「希望を抱かせてくれない」「今の経営陣にまったく同意できない」と回答した従業員で、「自分の仕事に熱意を抱いている」と回答した人は、わずか1パーセントだったという。

 

リーダーは目先のことより未来を展望すべし

 つまり、従業員は現在の状態に安定していて、未来に希望をもつことでパフォーマンスを最大限発揮する。希望がなければ、人は自信を失い、仕事に熱意を抱くことができず、無力感に襲われてしまう。

 一方で、「これから事態がよくなる」と、再び希望が持てる状況になれば、仕事へのモチベーションは大幅に向上する。そのため困難なときこそ、組織のリーダーの役割はいっそう重要になる。

 とはいえ現実は、幹部たちですら、すべての時間を将来に向けて新しいことに着手するのではなく、その日のやるべきことの対応に費やしている。有能なリーダーシップには、目の前の困難な問題を解決する能力も欠かせない。だが、希望と期待を生み出すためには、目の前よりもさらに先にある、今後の可能性を明確にすることの方がはるかに重要なのである。

 リーダーにとって最も困難なことのひとつは、組織に大きな成長をもたらす新たな取り組みに着手することである。先の見えづらい世の中で、リーダーとして希望を生み出し、部下にこれからの先の道筋を示すのだ。

 もちろん、なにも自分ひとりでする必要はない。自分が持つ“強み”を活かし、部下が持つ“強み”を引き出し、周囲の協力を得ることで、その仕組みを作っていけば良いだけだ。

参考文献:
『さあ、リーダーの才能に目覚めよう ストレングスリーダーシップ』(日本経済新聞出版社刊、トム・ラス著、バリー・コンチー著)

峯 英一郎/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

峯 英一郎/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

ライター・キャリア&ITコンサルタント

IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行なう。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。
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