経済のグローバル化が進む中、2013年に安倍晋三首相はTPPへの参加を表明しました。以後、日本国内では参加の是非をめぐって賛成派と反対派の議論が続いています。
反対派が掲げる主張の多くは、関税の撤廃によって国内の農業が深刻なダメージを受けるだろうというものです。一方で賛成派は、輸出がしやすくなれば日本の産業は新たな需要を得て活性化すると見通しています。どのような影響が出るか、いまだ不透明というのが大方の見方かもしれません。
それでも、長引く不況の中で、日本が変わるべきときを迎えているのは確かでしょう。その変化のきっかけがTPPにあるのか否か。あるのなら、諸外国を相手にどう立ち回る必要があるのか。現在の内閣には、強い信念を持った判断力と外交手腕が求められています。
このTPP参加案が菅直人元首相によって立ち上げられたときのスローガンが「平成の開国」でした。ということは、それ以前に「元祖の開国」があるのです。それが「幕末の開国」であり、幕末の開国を強い信念で実行した人物こそが、彦根藩主・井伊直弼(なおすけ)です。
不遇の少年時代に己を磨く
井伊直弼というと、「安政の大獄で大弾圧を行い、恨みを買って桜田門外で暗殺された傍若無人な政治家」というイメージが現在でも強いようです。しかし、多くの歴史上の敗者は、悪役に仕立て上げられていることを、忘れてはなりません。平清盛しかり、淀殿しかり。直弼もまた、明治維新で敗れた幕府の人間なのです。
実際の直弼は、… 続きを読む