日本ではユーモアは、かなり下に見られている。いい大人がダジャレを口にすれば、若者たちから「オヤジギャグ」と白い目で見られる。そもそもダジャレを漢字にすると「駄洒落」。「駄」は「駄目」「無駄」「駄馬」「駄菓子」など、他より劣ったり価値が低かったりするというものに用いられる。

 だが海外、少なくとも英語圏ではユーモアは教養の一つ。人が集まる場所では「パーティージョーク」の一つくらいは披露すべきだし、学校の式典に臨む校長も、教会の神父や牧師もほぼ必ずといっていいほど笑いをとる。「退屈な話は聞いてくれない」ことがわかっているので、とにかく笑わせて話に引き込もうと、ジョークが苦手な人でも努力する。

 

ユーモアを大切にする英語の標語

 同じことが標語や記事や広告にも言える。日本ではユーモアが入っていると「悪ふざけ」ととられることが多いが、英語圏ではむしろ「ユーモアのセンスは知性」と、肯定的に受け止められる。筆者が現在暮らしているオーストラリアの例をいくつか挙げてみよう。

 まずは「標語」。オーストラリア・クイーンズランド州政府の公用車は、こんな標語のステッカーを貼り付けている。

“Hi speed, low IQ.”

 直訳すると「速度が高いと、IQが低い」。制限速度を無視して運転する走り屋さんを皮肉っているものだが、「hi(high)」と「low」という反対語を入れることで、ユーモアというオブラートに包むことに成功している。これが「スピード違反をする人は、頭が悪い」では、同じ意味だとしても反発されること必至。不買運動などに発展する心配のない政府機関だとしても、さすがに採用されることはないだろう。

 また高速道路わきではよく、… 続きを読む

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柳沢 有紀夫

柳沢 有紀夫

海外書き人クラブ所属・オーストラリア在住ライター

慶應義塾大学文学部卒業。外資系広告会社で12年間コピーライターをした後、1999年よりオーストラリア在住。2000年、海外在住の日本人ライターに呼びかけ、海外書き人クラブを設立し、現在もお世話係を務める。『日本語でどづぞ』(中経出版)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか』(新潮文庫)、『オーストラリアで暮らしてみたら。』(JTBパブリッシング)など著書多数。『値段から世界が見える』(朝日新書)など、多くのライターに執筆参加してもらう企画も得意。2013年から別名義で小説家としても活動中。

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