多民族社会のマレーシアには、いろいろな信仰をもつ人びとが暮らしています。人口の過半数をムスリムが占め、国教もイスラムであるため、異教徒であっても社会生活を送る上ではイスラムについての基礎的な知識が必要です。そのひとつが「ハラール」です。

 「ハラール」とはイスラム法で「許されたもの・行為」という意味。この対義語が「ハラーム」で「イスラーム法では、神に明文をもって禁止されたこと。絶対にしてはいけない行為、すれば罪を犯すことになる行為」(井筒俊彦『イスラーム文化』)と説明されています。マレーシアでは「ノン・ハラール」と表記されることが多いようです。

 許されたものかどうかは、聖典『コーラン』や、預言者ムハンマドの言行録「ハディース」に依りますが、日々の生活では、多くのムスリムは、ハラール・マークの有無で判断しているようです。

 ムハンマドが預言者として活動していたのは西暦7世紀で、『コーラン』の成立はその後ですが、その時代になかったもの・行為については、法学者がイスラム法の解釈、適用について示す「ファトワー」が基準になります。国や地域、宗派による違いや、戒律に対する姿勢にも個人差があるため、一律ではありません。

 マレーシアの場合は、ムスリムと非ムスリムが日常的に接する環境のため、互いの価値や習慣が違うことがよくあります。

 

例年とは違った、2018年の中国正月風景

 たとえば、「旧正月」もその1つです。

 中国にルーツをもつ華人は、人口比では全体の23%ですが、クアラルンプール周辺など都市部に多く、小売や流通業では欠かせない存在です。華人にとって一年で最大の行事は旧正月で、縁起のよい赤や金色で干支のシンボルの飾りつけが行われ、太鼓やシンバルのにぎやかな拍子に合わせて獅子や龍が舞って、おめでたい雰囲気を盛り上げます。

 ところが、2018年は少し様子が違いました。中国の文化では干支の交替は旧暦の正月なので、本来なら酉から戌(犬)になる節目のはずなのに、犬を模した飾りを見かけないのです。… 続きを読む

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川崎 典子

川崎 典子

ライター

マレーシア・クアラルンプール在住。出版社、国際協力NGO勤務などを経て、現在、編集・ライター。「海外書き人クラブ」会員。1990年代に1年超の長旅をしたのがきっかけで「歩く旅」にめざめ、以後20年にわたって東南アジアとかかわっています。これまでの訪問国は、アジア地域を中心に20か国以上。歴史や文化を軸に、東南アジアの食や手工芸などについて寄稿しています。

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