1998年から日曜夜に放送されている『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)。今月4日の視聴率は17,3%(ビデオリサーチ調べ、関東)で、その週(1月29日~2月4日)の民放・NHKを含む全テレビ番組の視聴率ランキングで、1月31日オンエアのドラマ『相棒』(テレビ朝日系)と同率の4位となっている。日本で5本の指に入る人気番組だ。
そんな『鉄腕DASH』だが、以前、番組存続の危機を迎えたことがあった。前代未聞のピンチを好転させたきっかけは、視聴者との「物語の共有」だった。
元々は「DASHの名前を地図に残そう」という企画だった
『ザ!鉄腕!鉄腕DASH!!』(以下、鉄腕DASH)はジャニーズ事務所所属のアイドルグループ・TOKIOの5人を主人公とするバラエティ。「DASH島」では無人島を開拓、またかつての東京湾の姿を取り戻す再生企画「DASH海岸」では生物学的にも貴重な古代魚を発見して話題になった。さらには各地をめぐりながら、捨てられてしまう食材で料理を作る「DASH 0円食堂」など、日曜日の夜、明日から始まる1週間の活力になりうる、エネルギッシュな企画が並ぶ。
そんな番組の名を一躍知らしめたのはやはり、2000年からスタートした「DASH村」だろう。TOKIOが地元の人の助けを借りながら開墾したり、家畜を飼育したりしながら自給自足で暮らす村を作り上げ、「国土地理院」発行の日本地図に、『DASH』の名を残そうと始めたものである。これが、昔ながらの日本の原風景を再現する看板企画として成長していった。
DASH村は福島県の浪江町にある。もともとここは、2つの候補地から視聴者投票で選ばれた場所だったが、所在地は一般の方々が立ち入ったりしないよう、長らく公表されてこなかった。DASH村の役場として使った日本家屋が火の不始末で焼失した際も、地元紙などでは住所が報じられたが、番組ではあくまでも非公表を貫いてきた。その理由としては「番組のイチ企画」であり、リアリティを妙に持たせるべきではない、という判断に基づいていたからである。
だが、事態は急転直下を迎える。
震災で現地住民とともに村を離れることに
2011年3月11日、東日本大震災が発生。その日メンバーはまさにDASH村のロケ中。雨どいを庭で作っている最中だった。その模様は長らく未公開であったが、昨年12月24日のオンエアで当時の様子が初めて解禁された。そこにはメンバーやスタッフが「危ない!」と言いながら外に飛び出し、山肌が崩れ落ちる様子に恐れおののく姿が映し出されていた。
同年4月11日には、DASH村の所在地は福島県第一原子力発電所事故による計画的避難区域に指定され、それ以上企画を継続することができなくなった。
企画が始まって10年あまり。DASH村を、「夢見るユートピア」「仮想の世界」と位置づけていたスタッフは、初めて直面する現実に戸惑いを隠せなかったという。DASH村は直接的な被害はそこまで多くなかったものの、村作りの協力者だった町民は被災し、避難生活を余儀なくされた。もちろん、TOKIOのメンバーも村を追われることになったのである。
ここで、番組の制作サイドは大きな決断を迫られた。… 続きを読む