広告で効果を出すためには、一体何が必要なのか? 第1回は「振り向かせなければ、広告ではない」という広告の基本の基本を、第2回では、普通の広告を作ることは、最も競争の激しいところに参入することになり、リスクもコストも高くつくことを紹介しました。

 それでは、普通ではない、より多くの人に届く広告とは、一体どういうものなのでしょうか? かつて流行したコピーなど実例を元に紹介します。

 

「RT」や「シェア」の日本語訳は“これ知ってる?”

 WEB広告の台頭に伴い「拡散する」「バズる」という制作指針が広告業界で重視されるようになりました。TVCM全盛の時代から流行語というものはあったわけで、取り立てて新しい観点ではないのですが、1990年以降の広告がバブル崩壊の影響もあって世の中へのサービス精神を失っていったことへの反動もあるかもしれません。

 Wikipediaに「コマーシャルメッセージ」というページがあります。その中には「CMから生まれた流行語」という項目があるのですが、取り上げられた流行語は1950年から1980年にかけてどんどん数が増えていき、90年代以降はどんどん減っていきます。もちろんこれが完璧かつ公正なリストではないですが、興味深い事実です。

 そんな状況下にWEB広告が登場し、中でもSNSにおいて「シェア」や「リツイート」といったパブ効果(※)のある機能が実装されたことが大きく潮目を変えました。話題になるという現象が数値によって可視化され、デジタルなビジネスツールとなったのです。企業側からの要求として「話題化」という言葉が出るようにもなりました。

 ※マスコミやメディアに取り上げられることで、より多くの人に見てもらうこと。パブリシティ効果の略。

 ここで非常に大事な観点なのですが、RTやシェアという行為を日本語に翻訳すると「これ知ってる?」になります。「バズりたい!」「シェアされたい!」と思っていても、この観点が抜けていればどうにもなりません。自分が友人に「これ知ってる?」と言って教えたくなるものでなければ拡散はされないという厳然たる事実があります。

 では、どういうものを「これ知ってる?」と言いたくなり、どういうものをスルーしたくなるのか。「これ知ってる?」を細分化すると「これ面白くない?」「これかわいくない?」「これめっちゃインスタ映えじゃね?」とまあいろいろあるわけですが、要するに自己アピールに寄与するモノや、みんなで楽しめるモノしか人はシェアしません。

 

楽しめない広告は拡散しない

 キャッチコピーに関しても同じことが言えます。前回、コラムの終わりにこう書きました。

「24時間戦えますか」「ファイト、一発!」「一本いっとく?」というコピーですが、ひとつの共通点があることに皆さんお気づきでしょうか。それは「この商品でなければ言えないコピー」ではない、つまり「他社の競合商品でも使えるコピー」であるということです。

 逆の見方をすれば、こうも言えます。その商品でなければ言えないコピーは、その商品の存在しない場所では使うことができない。つまり、日常会話で便利に使ったりすることが難しいわけです。かつて流行語となったコピーをいくつか挙げてみましょう。… 続きを読む

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林 裕

林 裕

コピーライター

慶應義塾大学環境情報学部卒。博報堂へ入社後、独立。主な宣伝企画に「一本いっとく?」(田辺製薬アスパラドリンク)、「前田敦子とは何だったのか?」(AKB48)、「エヌ山くんとティティ川くん」(NTT東日本)などがある。TCC新人賞、OCCクラブ賞、OCC部門賞、ACC賞ほか受賞。(編集:株式会社ネクストアド)

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