林裕が語る「ウケる広告、ウケない広告」(第2回)

普通の広告を作ると、コストは高くつく

2018.01.16 Tue連載バックナンバー

 広告で効果を出すためには、一体何が必要なのか? 前回の原稿で「振り向かせなければ、広告ではない」という、「広告の基本の基本」に触れました。今回はその続きで、振り向かせる広告を作るにあたって何をしなければいけないのか、より具体的な形でお話ししたいと思います。

 

正しさは「それだけでは」無力である

 真面目な人が真面目な仕事をした時に陥りやすいミス。それは「正しいだけの広告」を作ってしまうことです。言わなければならないことを全部詰め込めているかどうか、問題のある言い回しはないか、どんなに些細なことであってもクレームが入らないようになっているか、といったことだけを気にした仕事をしてしまう。

「だけを」と言っても、これだけのことを気にするのでも十分に大変なのですが、とはいえ大変だからと言って、それをキチンとやり遂げたら世の中はちゃんと見てくれるというものでも全くありません。結局それだけ大変な思いをして、「出稿しなかったのと同じ」ことになってしまう。それはとてつもなくROI(投資利益率)の低い行為のはずです。

 広告における「企画」の役割とは、シンプルに言ってしまえば「企業の言いたいことを、消費者の聴きたいことに変換するための装置」です。前者がwhat to sayであり、後者がhow to sayだと考えるとわかりやすいですが、「正しさ」というのは基本的に前者によって担保される部分です。

 つまり「正しい」だけでは文字通りの道半ば。「この広告は正しいか」ということと同じだけの熱量をもって、「この広告は目立つのか」「人に話したくなるか」ということをチェックしなければいけないということです。もっと言えば「その企画を思い出すためのトリガーを埋め込んであるか」ということになります。

 最も機能しないのは「紋切り型」「予定調和」の無難な広告です。やはりどこかで「よくあるパターン」から逸脱しないと、「ウォーリーをさがせ!」のウォーリーみたいな、他と見分けのつかない広告になります。もちろん何もかも逸脱していると支離滅裂になってしまいますが、きちんと計算して逸脱した部分を用意すること、用意されているかチェックすること。ここが重要です。

 当たり障りのない「普通の広告」は、社内稟議を通しやすいものです。そのため、世の中にはそういった広告があふれています。そんな中で「普通の広告」のまま勝者になれるのは、「同じような広告の中で著しく出稿量が多かったもの」だけです。つまりパワーゲームです。パワーゲームに勝てるのであれば、この戦略は正しいと言えます。ただ、このゲームに勝つための出稿量は、並大抵ではありません。

世の中の人はジャンルごとに広告を認識しているわけではありませんから、大手自動車メーカーの新車や、大手ビールメーカーの新商品、あるいは携帯電話などの通信事業サービス広告、これらと同等の出稿量でないと勝負になりません。無難な広告で勝負するというのは、最もコストのかかる戦略なのです。

 くどいようですが、「普通の広告を作るということは、最も競争の激しいところに参入するということであり、リスクもコストも高くつく」ということ、これを頭の片隅に必ず留めておいてください。これを意識するだけで、広告計画の設計ミスはかなり防げるようになるはずです。

 

そのキャッチコピーは、キャッチするか?

 広告全体の話から、コピーの話に特化してお話ししましょう。普通のコピーと、目立つコピーの違いとは何か。そして、目立つコピーを書くための具体的な方法です。

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林 裕

林 裕

コピーライター

慶應義塾大学環境情報学部卒。博報堂へ入社後、独立。主な宣伝企画に「一本いっとく?」(田辺製薬アスパラドリンク)、「前田敦子とは何だったのか?」(AKB48)、「エヌ山くんとティティ川くん」(NTT東日本)などがある。TCC新人賞、OCCクラブ賞、OCC部門賞、ACC賞ほか受賞。(編集:株式会社ネクストアド)

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