Bizコンパス

将棋で人間とAIが対決する時代は終わった
2018.01.25

AIの進化を辿る第3回

将棋で人間とAIが対決する時代は終わった

著者 松原仁

 1970年代に誕生した「将棋AI」は、徐々に強くなっていったものの、しばらくの間、プロ棋士に勝てなかった。

 そのブレイクスルーとなったのが、2000年代に誕生した「ボナンザ」である。ボナンザは、すべての候補手から次の手を選ぶ「全数探索」と、ゲームの局面の形勢判断を点数として出力する「評価関数」を機械学習で作成する機能を備えていた。後に「ボナンザメソッド」と名付けられるこの方式の採用により、将棋AIの実力はプロ棋士を上回るようになった。

 将棋AIは、プロ棋士たちとどのように打ち勝ち、そしてプロ棋士たちは、人間をも越える実力を持った将棋AIとどのように向き合っているのだろうか? 公立はこだて未来大学の松原仁教授が解説する。

第1回> <第2回


 

AIよりも人間にハンデが与えられる時代が到来

 機械学習で評価関数を作るようにしたボナンザの登場以降、将棋AIは一気にプロ棋士のレベルに達した。ボナンザの方法はボナンザメソッドと名付けられて、ほとんどすべての将棋AIで採用されるようになった。

 2007年にボナンザは、渡辺明竜王と公開対局を行なった。ボナンザが負けはしたものの、途中までは善戦した。2000年には情報処理学会の50周年記念イベントとして、「劇指」、「ボナンザ」、「GPS将棋」、「YSS」という4つの将棋AIの合議制の「あから2000」が清水市代女流王将に勝利した。

 2013年にニコニコ動画で、プロ棋士5人と将棋AI5つとの「電王戦」シリーズが始まって、将棋AIが3勝1敗1引き分けで勝利した。男性の現役プロ棋士にコンピュータが勝ったのはこのときが最初である。特に上位棋士の三浦弘行九段に、GPS将棋が勝ったことは衝撃的なニュースになった。

 次からはルールが一部変更になって、将棋AIは対局の一定期間前にプログラムを固定して、それ以降改良しないこと、固定した将棋AIをあらかじめ対局相手のプロ棋士に提供して、事前練習をさせることになった。この変更は事実上、人間側にハンディを与えたものである。

 2014年の電王戦は4勝1敗で将棋AIが勝ち越したが、2015年はプロ棋士側が十分に事前対策をしたかいがあって、3勝2敗でプロ棋士が勝ち越した。トップレベルのタイトル保持のプロ棋士との対局は2007年以降実現していなかったが、情報処理学会はこの時点ですでに将棋AIの実力はトップレベルのプロ棋士を超えた(対局すれば勝ち越す)と判断して、2015年にトップレベルのプロ棋士に勝つ将棋AIを開発プロジェクトの終了宣言を行なった(結果的にこの宣言は正しかったと思われる)。

 その後電王戦は、プロ棋士の予選を勝ち抜いた人と、その年のトップの将棋AIが2局対戦する形に変更された。2016年には将棋AIのポナンザが山崎隆之八段に2連勝し、2017年には同じくポナンザが佐藤天彦名人に2連勝した。名人は将棋界で最も権威のあるタイトルなので、そのタイトル保持者に将棋AIが勝ったことで、人間とコンピュータの対決の決着はついたことになる(これで電王戦も終了した)。

 

人間とコンピュータが対決する時代は終わった

 将棋AIがボナンザ以降に急速に強くなったのは、… 続きを読む… 続きを読む

続きを読むには会員登録が必要です

松原仁

松原仁

公立はこだて未来大学副理事長兼システム情報科学部教授

株式会社未来シェア社長。人工知能、ゲーム情報学、知的交通システムなどの研究に従事。編著書に「将棋とコンピュータ」、「コンピュータ将棋の進歩」、「先を読む頭脳」など。前人工知能学会会長。将棋アマ5段。

関連する事例記事はこちらからご覧になれます

IT事例ライブラリ

関連キーワード

SHARE

あなたへのおすすめ

事例で解説!RPA、AI、チャットボット導入の勘所

2018.01.19

働き方改革&生産性向上のカギはどこにある?第1回

事例で解説!RPA、AI、チャットボット導入の勘所

防犯・見守りに期待大!AI人物検索サービスの可能性

2017.10.27

高精度の映像解析が実現するソリューション

防犯・見守りに期待大!AI人物検索サービスの可能性

チャット&AIで実現!カスタマーサポートの新機軸

2017.10.11

いま求められる“顧客接点の強化”第1回

チャット&AIで実現!カスタマーサポートの新機軸

LINE公式アカウントにAIを導入したNTT Comの狙い

2017.12.20

いま求められる“顧客接点の強化”第2回

LINE公式アカウントにAIを導入したNTT Comの狙い

IoTのエバンジェリストが語る、「第4次産業革命」に乗り遅れない方法

2019.05.24

デジタル化の“第一歩”の踏み出し方前編

IoTのエバンジェリストが語る、「第4次産業革命」に乗り遅れない方法

人手不足から企業を救う「顧客接点のデジタル化」の価値とは

2019.04.26

いま求められる“顧客接点の強化”第9回

人手不足から企業を救う「顧客接点のデジタル化」の価値とは

ゲームチェンジ“する側”に回るためのデータ活用術

2019.04.19

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第13回

ゲームチェンジ“する側”に回るためのデータ活用術

来客の受付から工場の異常検知まで、AIの適用範囲は広がっている

2019.04.17

第3回「AI・人工知能EXPO」レポート

来客の受付から工場の異常検知まで、AIの適用範囲は広がっている

文脈を理解しコンテンツを生成する、最新AIを解説

2019.04.17

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第12回

文脈を理解しコンテンツを生成する、最新AIを解説

三宅陽一郎が語る、人と人工知能が共生する世界とは

2019.04.01

人工知能ってなんだろう?

三宅陽一郎が語る、人と人工知能が共生する世界とは

情シスが“レガシー部門”になると、DXは進まない!

2019.03.29

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第10回

情シスが“レガシー部門”になると、DXは進まない!