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ラグビー日本代表、ベスト8を突破するためハードルとは?
2019.11.26

小山宣宏の「勝利の裏にあるもの」第39回

ラグビー日本代表、ベスト8を突破するためハードルとは?

著者 小山宣宏

 日本で初開催されたラグビーワールドカップにおいて、日本代表は世界の並みいる強豪を次々と撃破し、4戦全勝でグループリーグを突破。ベスト8では後に優勝を飾る南アフリカに敗れたものの、大健闘を見せた。

 日本代表がベスト8の壁を破り、さらなる高みを目指すにはどうすればいいのか。その方向性について分析してみた。

 

レベルアップするために招聘されたジョセフ

 今年の流行語大賞候補にノミネートされた「ONE TEAM」を合言葉に、日本代表をベスト8に導いたのは、ジェイミー・ジョセフ(以下、ジョセフ)ヘッドコーチ(以下、HC)だった。

 エディ・ジョーンズ(現イングランド代表監督・以下、エディ)前体制下での日本は、日本人の「勤勉性」を活かしたラグビーを体現した。豊富な運動量を武器とする戦い方は一定の成果を上げ、15年ワールドカップの1次リーグでは、「世界最強軍団」の呼び声が高かった南アフリカを相手に34対32で勝利。世界中から「歴史的快挙」と称賛された。

 だが、次のスコットランド戦では10対45と大差をつけられて敗れた。続くサモア戦、アメリカ戦ではいずれも勝利し、3勝1敗としたものの、同じ勝敗数だったスコットランドに直接対決で敗れていたために、1次リーグで敗退。悲願の決勝トーナメント進出の夢は果たせなかった。

 日本がさらにレベルアップするために新たにHCを任されたのが、ジョセフだった。

 

「自主性を育む」指導方針に選手たちが異を唱える

 ジョセフはエディとは異なるスタイルで選手たちを指導した。

 16年2月、HCに就任した直後の記者会見でジョゼフは「日本人選手に足りないものは何か」という記者からの質問に対し、「自主性」と答えた。

「日本人選手は言われたことに従えるが、それ以上のことはできない。そうした意識を変えていく」

「トップダウン式の管理型の指導方法」から「自主性を育む指導方法」へ。180度異なる方針だが、ジョセフの意図は明快だった。

「世界の強豪と対等に戦うには、選手自らがグラウンド上でアイデアを出していかなければならない。そうした場面を乗り越え、結果を出して自信を持つことで、選手のスキルはワンランクもツーランクもアップしていく」

 こうしてジョゼフ体制がスタートしたが、当初は思い通りには進まなかった。選手たちがその指導方針に異を唱えたからだ。

 例えば、昨秋の代表合宿でのこと。「自分たちが目標としているラグビーはどういうスタイルか」「そのなかで自分が果たすべき役割は何か」などを意見交換することを目的に、選手だけでのミーティングが行われた。

 だが、メンバーの1人だった田村優は、「ミーティングなんてやりたくないし、その場で発言するのも嫌だ。時間が来たらミーティングルームに来て、時間がただ流れてくれるのを待つだけでいい」と消極的だった。田村だけではない。若く代表経験の浅い選手ほど、「こんなミーティングを行う意味はあるのだろうか?」と疑っていたのだ。

 そのうえ「自主性」を重んじたことで、前体制よりも規律が緩んでしまう。その点に危機感を募らせたキャプテンのリーチ・マイケル(以下、リーチ)は、指導方針を巡ってジョセフとしばしば口論することもあった。

 チームのトップであるHCとキャプテンが一体となっていないようでは、他の選手間同士で不安やあつれきが生じてしまう。「自主性」を育ませることは、難しいミッションだった。

 

1つの目標が、チームに結束力を生む

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小山宣宏

小山宣宏

スポーツジャーナリスト

1973年千葉県出身。出版社、編集プロダクション勤務を経て、2007年に独立。近年は高校野球やプロ野球を中心とした取材・原稿が多い。『実は大したことない大リーグ』(江本孟紀/双葉社)、『日本人投手がメジャーで故障する理由』(小宮山悟/双葉社)、『名将の条件』(野村克也/SBクリエイティブ)、『3000安打の向こう側』(松井稼頭央/ベースボール・マガジン社)などの書籍を手掛ける。

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