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甲子園に「球数制限」を導入すべきか?
2019.08.30

小山宣宏の「勝利の裏にあるもの」第37回

甲子園に「球数制限」を導入すべきか?

著者 小山宣宏

 今夏の甲子園が始まる前の7月、岩手県大会決勝戦で起こった大船渡高校のエース・佐々木朗希投手の登板回避問題が話題となった。この問題が発端となり、メディア上では「球数制限」の是非が熱く議論されたが、球数制限を甲子園で導入すると、どのようなことが起こり得るのか。その良し悪しを探ってみる。

 

球数制限の問題は、「当事者になると語れない問題」

 今夏の甲子園出場を懸けた岩手県大会の決勝戦で、大船渡の佐々木朗希投手が先発登板を回避した。佐々木は今年4月のU-18日本代表候補合宿で、日本の高校生では最速となる163キロをマーク。10月に行われるドラフト会議においても目玉として注目されていた右腕だけに、決勝戦で投げなかったことは衝撃を持って伝えられた。

「球数制限」については、故障を防ぐことなどを目的に甲子園での導入が議論されてきたが、地方予選の、しかも甲子園の出場が懸かった大一番で、けが以外の理由でチームの大黒柱が投げなかったという話はこれまで一度も聞いたことがない。

 結局、大船渡は4番手の投手が先発した。花巻東打線に6回までに9点を献上し、試合は12対2の大敗。甲子園出場の夢は絶たれた。

 試合後、大船渡の国母陽平監督は、「故障を防ぐために佐々木を登板させなかった」と語ったが、それならばなぜ、延長12回までもつれ込んだ4回戦の盛岡四戦で194球も佐々木に投げさせたのか。そちらのほうが故障するリスクがあるのではないか、という疑問が湧く人だっているに違いない。

 佐々木自身、準決勝で勝利した後の会見で、「決勝で勝たないと、1回戦で負けるのと一緒」と語っていただけに、本心では「決勝戦は投げたかった」はずだ。そのことは決勝で敗退した後の記者会見でも如実に表れていた。佐々木は登板しなかったことについて新聞記者から質問された際、14秒の沈黙をした後に、「監督の判断なのでしょうがない」と語った一方、「投げたい気持ちはあった」という発言もしていた。この言葉こそ、「佐々木の本心」であったような気がしてならない。

 この夏、私は大学野球のある大会を取材する機会があった。そこで10人の選手に今回の大船渡の件を聞くと、「彼の体と将来のことを考えたら、先発を回避するのも仕方がない」と答えてくれた。

 そこで私はこんな質問をぶつけてみた。

「もしあなたが、甲子園を懸けた決勝戦に臨んだとする。その時あなたのチームのエースが『故障する可能性があるから』という理由で登板しなかったら、あなたはそれでもよしとするのか?」

 こう聞くと、… 続きを読む… 続きを読む

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小山宣宏

小山宣宏

スポーツジャーナリスト

1973年千葉県出身。出版社、編集プロダクション勤務を経て、2007年に独立。近年は高校野球やプロ野球を中心とした取材・原稿が多い。『実は大したことない大リーグ』(江本孟紀/双葉社)、『日本人投手がメジャーで故障する理由』(小宮山悟/双葉社)、『名将の条件』(野村克也/SBクリエイティブ)、『3000安打の向こう側』(松井稼頭央/ベースボール・マガジン社)などの書籍を手掛ける。

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