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「愛のムチ」に効果はあるのか? 高校野球の監督、プロのコーチに聞く
2019.03.29

小山宣宏の「勝利の裏にあるもの」第29回

「愛のムチ」に効果はあるのか? 高校野球の監督、プロのコーチに聞く

著者 小山宣宏

 今、世の指導者には考え方の変革が求められている。スポーツの世界、とりわけ高校野球とプロ野球の世界では、どのように考え方を変えて選手たちを指導しているのだろうか。その実態に迫ってみた。

 

「愛のムチ」って何だろう?

 2018年のスポーツ界では、指導者と選手の間であってはならない不祥事が続発した。女子レスリングに端を発し、アメリカンフットボール、ボクシング、大学駅伝、女子アイスホッケーと、似たような理由で組織のトップや指導者が立て続けに辞任した。

 指導者から選手に対する言葉の暴言、ひどいものになると身体を殴るというものもあったが、いずれのケースも指導者が「愛のムチ」だと言ってはばからなかった。

「いったい愛のムチってなんだろう?」そう疑問に思う人も多いはずだ。

 学生時代、体育会系の部活動に入っていた人の多くは、指導者から叱責、あるいは鉄拳制裁を受けた経験があるのではないだろうか。

 こうした経験が記憶に残り、自らが指導者となったときに、同じような指導をしてしまう。これが「負の連鎖」となり、ここに来て大きな問題へと発展してしまったわけだ。けれども今のスポーツの現場では、考え方を改めて「選手に合った指導」を行っているケースも多々ある。

 

「金八先生」「スクール・ウォーズ」の時代は終わった

 私は「甲子園優勝校監督が教える 勝てるチームの作り方」(芸文社)、「参謀論」(橋上秀樹/徳間書店)の書籍制作のため、昨年末から今年にかけておよそ3ヵ月の間、甲子園で優勝経験のある5つの高校を訪問した。龍谷大平安(龍谷大付属平安高校、京都)、日大三(日本大学第三高校、東京)、前橋育英(群馬)、花咲徳栄(埼玉)、帝京(東京)という名門校を率いる監督たちから、指導法について話を訊くためだ。さらに後日、プロ野球の現役コーチからも、同様のテーマで話を聞いてみた。

 そこで分かったのは、「今の選手たちに合わせた指導」が確立されつつあることだった。

 たとえば花咲徳栄高校(2017年夏の甲子園で優勝)の岩井隆監督は、今の高校生についてこう話す。

「今の子どもたちは、スパルタ式の教育はおろか、親からきつく叱られたという経験すらない。そんな彼らを私は『パーソナライズで育ってきた子ども』だと理解しているのです。私たちの世代は集団意識が強かったのに対して、彼らは集団よりも個人を大事にするあまり、周りに気を使わないという特徴がある。

 スパルタ式で育った世代にしてみれば、今の子どもたちには手を焼いてしまい、どう接していいのかわからないことも多々あります。そこで『この子たちはパーソナライズな考えを持った子どもなんだよな』と一歩立ち止まって考えることで、これまでとは違った指導ができると考えています」

 かつての「金八先生」や「スクール・ウォーズ」のように、指導者が手取り足取り教えるやり方は、今の時代には通用しない。岩井監督は「この子たちを観察して、サポートしてあげよう、という考え方でないと選手たちはついてこないのです」と、話す。

 現代の指導者は「今までの指導方法が通用しないのはなぜなんだ」と嘆くのではなく、… 続きを読む… 続きを読む

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小山宣宏

小山宣宏

スポーツジャーナリスト

1973年千葉県出身。出版社、編集プロダクション勤務を経て、2007年に独立。近年は高校野球やプロ野球を中心とした取材・原稿が多い。『実は大したことない大リーグ』(江本孟紀/双葉社)、『日本人投手がメジャーで故障する理由』(小宮山悟/双葉社)、『名将の条件』(野村克也/SBクリエイティブ)、『3000安打の向こう側』(松井稼頭央/ベースボール・マガジン社)などの書籍を手掛ける。

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