プロ野球のシーズンオフになると、毎年のようにフリーエージェント(以下FA)によって、実績のある大物選手が移籍する。成功するケースもあれば失敗するケースもあるが、過去のFA移籍の例を紐解くと、成否を分けるある法則がありそうだ。

 

かつてのFAは「巨人への移籍」が当たり前だった

 日本のプロ野球におけるFA制度は、1993年のオフに導入され、2003年、08年に権利を取得するまでの日数が改正された。現在のルールによると、06年までに入団した全選手は一軍での出場選手登録の日数が1160日、2007年以降のドラフトで入団した大学・社会人選手は1015日経過すれば、国内におけるFA移籍の権利が取得できる。

 かつて「FAでの移籍先」として人気を博したのは巨人だった。FA制度が施行した1993年から10年近くは、落合博満(中日)、広沢克己(ヤクルト)、川口和久(広島)、河野博文(日本ハム)、工藤公康(ダイエー/現・ソフトバンク)、江藤智(広島)ら、セ、パの両リーグからこぞって巨人に移籍した。

 大の広島ファンであることを公言していた元ニュースキャスターの筑紫哲也氏(故人)はかつて、川口が巨人に移籍した際、彼が司会を務めるニュース番組内で、皮肉を込めてこう言っていた。

「巨人キラーが、巨人に移籍してどうする」(川口の対巨人戦の勝利数は33勝。この数字は歴代投手のなかでも10位にランクインする)

 もちろん、選手側の思惑も一理ある。落合は巨人に移籍を決めた理由に、「条件の一番いいチームを選んだ」とこともなげに語っている。人気、財力ともにトップのチームを選ぶのは、さもありなんと言ったところだ。

 ただし、巨人側にしてみれば、別の意図もある。それは「ライバルチームの戦力を削ぐ」ことだ。この意味は実に大きい。

 落合や広沢、川口、江藤は、投手と野手の違いはあれども、いずれもチームの中心選手である。彼らを前に手痛い一発を浴び、あるいは要所で抑えられたという経験をしていれば、「うちに来ればその心配がなくなる」と考えたっておかしなことではない。

 その結果、仮に活躍できなかったとしても、「チームに居続けさせる」ことで、「相手チームの戦力は低下しているのだから、居ることだけで十分その意味がある」わけだ。

 

選手がFAを宣言する理由は「5つ」に分類できる

 だが近年、FA移籍の傾向は「巨人一辺倒」ではなくなってきた。それどころか、ロッテや楽天といったチームに移籍する選手も出てきた。時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、昔と比べて大きく変わったことは間違いない。

 なぜこのように変化してきたのか。それは、… 続きを読む

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小山宣宏

小山宣宏

スポーツジャーナリスト

1973年千葉県出身。出版社、編集プロダクション勤務を経て、2007年に独立。近年は高校野球やプロ野球を中心とした取材・原稿が多い。『実は大したことない大リーグ』(江本孟紀/双葉社)、『日本人投手がメジャーで故障する理由』(小宮山悟/双葉社)、『名将の条件』(野村克也/SBクリエイティブ)、『3000安打の向こう側』(松井稼頭央/ベースボール・マガジン社)などの書籍を手掛ける。

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