球団史上初となるセ・リーグ3連覇を果たした広島カープ。1984年以来の日本一を目指して采配を振るう就任4年目の緒方孝市監督は、選手とどのように向き合いながら“常勝軍団”を作り上げたのか。その手腕を紐解いてみる。

 

広島のFAに対する「奇想天外」な考え方とは

 9月26日、真っ赤に染まったマツダスタジアムのマウンドで、緒方監督は現役時代の背番号と同じ9回、胴上げされた。思えばシーズン開幕前、ほぼ全員の野球評論家が広島を優勝候補に推すなか、同監督は「チームは生き物。外から見ていただくのと、中にいるのとではまったく違う」と不安を漏らしていた。

 背景にあるのは、チームに昔から根づいている方針だ。広島という球団は、基本的にフリーエージェント(8年間在籍した選手がいずれの球団とも選手契約できる制度。以下、FA)による補強や大物外国人助っ人を獲得しない。そのうえ、主力選手がFAを取得するなり、新天地へと移籍してしまう傾向にあった。

 過去を振り返ると、江藤智(1999年オフに巨人へ移籍)、金本知憲(2002年オフに阪神へ移籍)、黒田博樹(2007年オフにロサンゼルス・ドジャースへ移籍)、新井貴浩が(同オフに阪神へ移籍)、大竹寛(2013年オフに巨人へ移籍)、前田健太(2015年オフにロサンゼルス・ドジャースへ移籍)というように、「チームの顔」ともいえる選手たちが次から次へ移籍した。

 だが、広島のフロントはFAについて、「主力選手を獲得する」制度ではなく、「高額年俸の選手を、正々堂々と追い出せる」制度であると考えていた。その結果、1998年から2012年まで15年連続でBクラスと、まさに「冬の時代」を迎えた。

 他のチームでは決して考えられない、FAについての「奇想天外な方針」を貫いたことが、広島というチームを優勝から遠ざけていた一因であるのは間違いない。

 

「ドラフト1位で投手を獲る」、その理由とは

 そしてもう一つ、広島は「ドラフト1位で投手を獲る」という方針をとっていた。その証拠に、セ・リーグを制した1991年から昨年までの27年間のうち、なんと20人をドラフト1位指名で投手を獲得していたのだ。

 これについてもれっきとした理由がある。たとえば… 続きを読む

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小山宣宏

小山宣宏

スポーツジャーナリスト

1973年千葉県出身。出版社、編集プロダクション勤務を経て、2007年に独立。近年は高校野球やプロ野球を中心とした取材・原稿が多い。『実は大したことない大リーグ』(江本孟紀/双葉社)、『日本人投手がメジャーで故障する理由』(小宮山悟/双葉社)、『名将の条件』(野村克也/SBクリエイティブ)、『3000安打の向こう側』(松井稼頭央/ベースボール・マガジン社)などの書籍を手掛ける。

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