「箱根駅伝での青学大は強い!」。もはや誰もが疑う余地のない事実だが、ここに至るまでの道のりは原晋監督の指導抜きには語れない。原監督は選手たちにどのような指導を施し、選手個々の実力を伸ばすことに成功したのか。原自身の不遇時代の経験を元に、これまでの長距離マラソン指導者の常識を覆す、その手腕をひも解いてみた。

 

結果的に圧勝だった2018年箱根駅伝

 「まさか」が「やはり」に変わった瞬間だった。

 お正月の風物詩として人気の第94回東京箱根間往復大学駅伝競走(以下「箱根駅伝」)。青山学院大学は往路では2位に甘んじたものの、復路の6区、芦ノ湖を36秒差でスタートした1位の東洋大学を、青学大の小野田勇次(3年生)が山を下って15キロを過ぎた地点で追いつくと一気に抜き去り、小田原中継所に到着したときには52秒差で首位に立った。

 圧巻だったのはその後の7区を走った林奎介(3年生)だ。全日本大学駅伝(以下「全日本」)、出雲全日本大学選抜駅伝(以下「出雲」)、そして箱根駅伝と「学生3大駅伝」に初めて出場する無名のランナーだった彼が、小田原-平塚間を1時間2分16秒という誰もが成しえなかったタイムで走破し、区間新記録を樹立、金栗四三杯(大会MVP)を獲得した。

 「どんどん引き離されているので、ウチのランナーがブレーキなのかと思ったら、区間3位でまとめていた。それほど林君が速かった」と東洋大のコーチに言わしめるほどの快走で、史上6校目となる青学大の4連覇に大きく貢献した。

 箱根駅伝本大会前、「チーム全員でオーケストラのような美しいハーモニーを奏でることができれば、必ず優勝できる」と話していた原にとって、たとえ往路で苦戦しても「6区で追い抜き、8区で引き離す」とイメージしていた通りの試合展開となった。

 2004年に監督に就任してから14年が過ぎ、チームは黄金期を迎えているが、ここに到達するまでには、時間をかけての「チームの大改革」が必要だった。

 

「理不尽な指導が当然」の陸上界に疑問を投げかける

 監督に就任した当初、原は陸上界の発展を拒んでいる要因として、… 続きを読む

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小山宣宏

小山宣宏

スポーツジャーナリスト

1973年千葉県出身。出版社、編集プロダクション勤務を経て、2007年に独立。近年は高校野球やプロ野球を中心とした取材・原稿が多い。『実は大したことない大リーグ』(江本孟紀/双葉社)、『日本人投手がメジャーで故障する理由』(小宮山悟/双葉社)、『名将の条件』(野村克也/SBクリエイティブ)、『3000安打の向こう側』(松井稼頭央/ベースボール・マガジン社)などの書籍を手掛ける。

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