小山宣宏の「勝利の裏にあるもの」(第16回)

「タイブレーク」導入で高校野球はどう変わるのか?

2018.08.30 Thu連載バックナンバー

 日本高校野球連盟の間で長く議論され続けてきた「タイブレーク制」が、記念すべき100回目を迎えた夏の全国高校野球選手権で初めて実施された。この新たなルールの導入により高校野球はどう変わるのか、ピッチャー、チームの両面から分析してみた。

 

タイブレークにメリットはあるのか

 100回目の選手権大会ということもあり、大いに盛り上がりをみせた夏の全国高校野球。金足農業が秋田県勢、東北勢として初めて深紅の大優勝旗を勝ち取るか。あるいは春の選抜大会で優勝した大阪桐蔭が、史上初となる2度目の春夏連覇を達成するのか。さらにはドラフト候補に挙がる有望選手の奮闘ぶりにも注目が集まった。

 そうしたなか、あるルールの適用が話題となった。それが「タイブレーク」である。

 タイブレークとは、延長13回からノーアウト1、2塁というシチュエーションでプレーするルールである。硬直した試合展開からスムーズに決着させられるというメリットがあるほか、ピッチャーの負担を軽減するといわれている。日本高校野球連盟は議論に議論を重ねて、今春のセンバツ(第90回選抜高等学校野球大会)から実施されることになったが、この大会では適用する機会が訪れなかった。

「本当にピッチャーの負担が軽減されるのか」

「チャンスを作ってから得点するという、野球本来の持つ醍醐味が失われてしまうのではないか」

 このようなことが危惧されたなか、今大会で2試合、タイブレークの試合があった。大会2日目の第4試合・佐久長聖対旭川大、大会8日目の第3試合・星稜対済美である。

 ここではタイブレーク以後のイニングで、どのような攻撃となったのか、順を追って詳細を見ていく。

 

【8月6日 大会2日目 第4試合:佐久長聖5−4旭川大】
タイブレークを練習していたチームvs練習していないチームの結果は?

 この試合では、延長14回表に佐久長聖が1点を加えて勝利。ノーアウト満塁という状況で、 2番の上田勇斗が放ったセカンドゴロの間に三塁ランナーが生還した。

 延長13回以後にポイントとなった点は、2つ挙げられる。

 1つは13回裏の旭川大の攻撃で、2番の高谷耕平が3球目でスクイズバントを試みたものの、ファールになったことだ。

 13回表の佐久長聖は無得点で終わってしまった。そのため、「1点とれば勝つ」という状況のなかで、真ん中やや高めのボールをファールしたところを見る限り、「決めなくちゃいけない」と打者が極度に緊張していたことがわかる。

 彼は打席のなかで「しまった!」という思いがあったのだろう。その直後の4球目を簡単に打ち上げてキャッチャーフライとなってしまう。続く打者も初球でピッチャーフライとなり、一打サヨナラの決定的なチャンスは潰えてしまった。

 もう1つは「バントでランナーを進塁させようとしたこと」だ。

 ノーアウト1、2塁の場面で長打を狙う強攻策に出て怖いのは、「ダブルプレーになる」ことである。その結果、2アウト3塁になれば、次の打者には相当なプレッシャーがかかる。それを軽減させる意味においても、「1つアウトを与えてでも、バントは有効な作戦である」と両校の監督は考えたのだろう。

 13回表の佐久長聖の大池祐斗が試みた送りバントは失敗したが、その後の旭川大(1番の平澤永遠)、14回表の佐久長聖(1番の眞銅龍平)はそれぞれ成功させた。そしてこのときに佐久長聖がもぎとった1点が、勝利を呼び込むことになる。

 反対に1点を先にとられたことで、勝つには2点以上が必要となった旭川大は、一か八かの強攻策に出た。だが、これが裏目となってしまい、ダブルプレーとなってしまう。

 皮肉なのは、負けた旭川大は… 続きを読む

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小山宣宏

小山宣宏

スポーツジャーナリスト

1973年千葉県出身。出版社、編集プロダクション勤務を経て、2007年に独立。近年は高校野球やプロ野球を中心とした取材・原稿が多い。『実は大したことない大リーグ』(江本孟紀/双葉社)、『日本人投手がメジャーで故障する理由』(小宮山悟/双葉社)、『名将の条件』(野村克也/SBクリエイティブ)、『3000安打の向こう側』(松井稼頭央/ベースボール・マガジン社)などの書籍を手掛ける。

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