企業においてマネージャーになった場合、部下の教育は避けて通ることはできない仕事のひとつです。
そんな時に役に立つのが、「フィードバック」です。成果のあがらない部下に「耳の痛いこと」をフィードバックすることで、仕事を立て直し、成長を促すことができます。
今回は東京大学総合教育センター准教授・中原淳氏の著書『フィードバック入門』(PHPビジネス新書、2017年)を参考に、フィードバックの力を鍛える方法を紹介します。
説得力のある言葉、冷静に対処する心をどう養えば良いのか
中原淳氏は、企業・組織における人材育成・リーダーシップ開発を専門している「人材開発」の第一人者です。
「フィードバック力」は中原氏が提唱する、日本では新しい部下育成法で、「場数(ばかず)」を踏むこと、つまり「経験知」が大きな要素となります。説得力のある言葉選びや、話が通じない時にも冷静に対処する方法などは、数をこなすことでしだいに身についてくるといいます。
しかし、スキルの向上を時間の流れに任せるのは、効率的ではありません。マネージャーになったなら、スキルの向上を早める努力をするべきです。その「努力」について、中原氏はあるトレーニング方法を推奨しています。
“恥ずかしい姿”が最高の教材になる「模擬フィードバック」
部下に対するフィードバックは、一般的には人目につかない空間で行われます。部下に恥をかかせないためにも、個室で行ったほうがよいという配慮ではありますが、一方で自分の部下へのフィードバックを客観的に見てくれる人がいないという点では、諸刃の剣でもあります。
そこで中原氏がすすめるのが「模擬フィードバック」です。模擬フィードバックは、自分と、自分と同じ肩書き以上の役職者のふたりがいれば実行できます。相手に「部下役」になってもらうことで、疑似的にフィードバックを行う練習法です。
模擬フィードバックでは、たとえば「納期が遅れている」「クライアントから同じクレームが続いている」などのフィードバックしたい内容を設定し、「部下役」の相手には、言いわけをしたり、わがままを言ってもらうのが効果的です。
模擬フィードバックをより効果的にするポイントは、練習の様子を… 続きを読む