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直木賞作品「つまをめとらば」に見る、人生の味わい
2016.05.14

大人のエンタメ小説! ~話題の本を読む~第1回

直木賞作品「つまをめとらば」に見る、人生の味わい

著者 天木 晶

 今年1月、第154回直木三十五賞(直木賞)の受賞が決まった青山文平氏の『つまをめとらば』(文藝春秋)は、男と女の機微をリアルに描く、6編を収める時代小説集だ。

 舞台はいずれも、18世紀後半から19世紀前半の江戸時代後期。世の中は平和で成熟しているが、主君を守り立てる役目を担う武士たちは、毎日の生活に苦労している。女性との関係に悩み、進路を模索する武士の姿は、現代のビジネスマンと通じる。

 

地方勤務あり、就職活動あり。その姿は現代人と同じ

 『つまをめとらば』に登場する武士たちは、藩主や旗本に仕え、生活のために働き、日々の仕事に翻弄されている。現代のビジネスマンが読むと、身につまされる話ばかりだ。

 たとえば、2編目に収められている「つゆかせぎ」をみてみよう。主人公は上役に決して逆らわず、細々と家禄をつなぐ勤め人。俳諧師(はいかいし、俳句の名人のこと)として注目されたことはあったものの、妻のために勤めをやめることはなかった。

 ところが妻が急死して、途方に暮れてしまう。しかも、死んだ妻が2年ほど前からペンネームで小説を書いていたことを知る。主人公は、妻が俳諧師として独立しようとしなかった自分への抗議で小説を書いたのではないかと、これまでの人生を振り返る。

 4編目「ひと夏」には、地方への単身赴任が描かれている。東北の小藩でずっと無役だった若侍が、代々の担当者が逃げ帰ってきた、いわくつきの土地「杉坂村」への赴任を命じられる。〈なにもしない。/挑発に乗らない。/ただ、居つづける〉という心得を前任者から引き継いだ主人公だが、結局は杉坂村で事件に遭遇してしまう。だれも助けてくれない状況だが、主人公は困難に立ち向かっていく。

 

運命に翻弄されるサムライたち

 仕事だけでなく、異性関係においても、『つまをめとらば』の登場人物は苦労している。男女の間は、なかなか理想どおりにいかない。

 1編目「ひともうらやむ」は、美男美女の夫婦に起こる事件を描く。地方の小藩で家老職を務める御曹司が、藩主が新たに召し抱えた西洋外科医の娘に恋をして娶るが、名医の父と気ままに諸国をめぐってきた美貌の娘は、… 続きを読む… 続きを読む

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天木 晶

天木 晶

フリーライター

長年のエンタメ分野取材経験をもとに、多ジャンルで活躍。主なフィールドは本と映画。折々のスポーツ観戦。

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