社交の場となる店を目指して
内幸町駅から徒歩2分、新橋駅から徒歩5分ほど歩いたところにある小体な店。店頭に掲げられたプレートに「響」の文字が見える。
のれんをくぐると、中には湾曲したカウンターにテーブルが1つ、カウンターの上にはおばんざいと酒瓶が並ぶ、ここが「小料理バル 虎ノ門Kanade(かなで)」だ。
この店の店主は渡邉育美(わたなべいくみ)さん。2014年9月にオープンし、まもなく開店1年半を迎える。

渡邉さんは元々、ホテルなどサービス業についており、イタリア・ミラノにあるバルのような、活気のある、社交の場ともなる店を開きたいと考えていたそうだ。その後、和食の方が自分に合っていると転換。その修業は床磨きから始まったという。
「当時はもう必死でやっていましたけど、今になって、あのときの話がここにつながっているのかとわかるときもありますね」
その後、数店での修業を経て、独立前にいたのは、新橋の割烹「もと」。日本酒約30種を揃え、それによく合う絶品の酒肴を出すと定評のある超人気店だ。
「『もと』では、面接で“アジフライさえできればいい”って言われたのに、結局、調理は全て担当してましたね」と笑いながら教えてくれた。
迅速かつ丁寧な調理に、食欲がそそられる
料理は基本的に日替わり、手書きのメニューには、あんきも、カキの昆布焼き、鶏の天ぷら、だしまき玉子……と20種以上の料理が並ぶ。肉も魚もバランス良く取り入れた構成だ。
渡邉さんは基本的にはひとりで店に立ち、接客から調理までこなしている。
カウンターからは調理する様がよく見え、注文を受け調理に取りかかる様子は、迅速かつ丁寧、見ていて気持ちが良い。いったいどんな料理が出てくるのかと期待が増す。
そうして出された「ブリ塩焼き」は厚い身から旨みと脂がぎゅっとしみだす一品。添えられた鬼おろしとピクルスがいい口直しになっている。添えられた緑のソースはスイートバジルだそうだ。「魚系の料理は、少し洋風の要素も入れるようにしているんです」とのこと。塩焼きはそのままでも十分おいしいが、ちょっとソースを付けると味わいががらりと変わり、最後まで飽きが来ない。
魚の仕入れ先を聞いてみると、… 続きを読む