始皇帝による中華統一戦争をテーマにしたマンガ『キングダム』が人気だ。これまでもマンガ読みには知られた作品だったが、今年5月にTVのトークバラエティ『アメトーーク』(テレビ朝日系列)で取り上げられ、さらにその知名度を広げた。アニメ(NHK系列で放映)やゲームなど、人気マンガらしいマルチメディア展開もしている。近年の歴史マンガで最大のヒット作であることは疑う余地がない。
舞台は中国の春秋戦国時代。その最末期に中国を統一した秦王・政(のちの始皇帝)と、統一戦争で武功をあげた武将・信(史実では李信)の2人を軸に物語は進む。
なぜ、日本では決して馴染み深いとはいえない春秋戦国時代と始皇帝を作品のテーマにしたのか。本作が連載デビューとなる作者の原泰久は、「『三国志』はやり尽くされた観がある。始皇帝ならほとんど描かれていないので主人公にできると考えました」と語っている(『pen』No.387 2015より)。
確かに、春秋戦国時代を舞台にしたマンガ作品はほとんどないが、一方で読者がその時代の知識を持たないというのは、歴史マンガにおいては圧倒的なハンディキャップとなる。『キングダム』はそんなハンデを軽々と乗り越え、大ヒットを記録しているのだが、その面白さはどこにあるのだろうか。
春秋戦国時代というフロンティアを開拓… 続きを読む