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家を捨て、国を変え、燃え尽きた孤高の存在・姜維
2016.02.22

上永哲矢の「三国志、歴史を変えた決断」第32回

家を捨て、国を変え、燃え尽きた孤高の存在・姜維

著者 上永 哲矢

 歴史上には、何をやらせても十分に能力を発揮するスーパーマンのような人物が時々現れる。小説『三国志演義』に登場する姜維(きょうい)は、まさにそうした男だ。諸葛亮の策を見破り、趙雲と互角に打ち合う鋭い槍さばきを見せる。文武両道を地で行く、傑出した才能の持ち主として描かれる姜維だが、小説上ではなく史実の彼はどうだったのか。

 

運命を変えた諸葛亮との出会い

 魏が支配していた地域の西のはずれに、涼州の天水(てんすい)という郡があった。現在は甘粛省(かんしゅくしょう)と呼ばれるその土地に「姜」という名の知られた豪族がいた。その家に生まれたのが姜維である。姜維の父は勇敢な男だったが、この地方で多発していた異民族の反乱を鎮圧する戦いに出て戦死してしまう。まだ幼かった姜維は母の手で育てられた。

 姜維は父の無念を晴らすためか、功名を立てたいと夢みていた姜維は、倦むことなく学問に励み、武芸を鍛え立派な若者に成長していく。そうした努力により、やがて姜維は天水郡の役所に勤め、軍事に携わる役人になる。

 そんな姜維の運命が一変するのは西暦228年、27歳のときである。蜀の丞相(じょうしょう)諸葛亮が北伐(魏討伐)の軍を進めてきたのだ。「魏を倒して漢の再興を遂げる」というスローガンを掲げる蜀軍の勢いはすさまじく、魏も総力を挙げてこれを迎え撃つことになった。このとき姜維は偵察を命じられて城を出るが、一緒に城を出たはずの太守(郡の長官)が先に城へ戻ってしまい、姜維は締め出されてしまう。困った姜維は部下たちを連れて母や親族が住む冀県(きけん)へと向かうが、ここでも入城を拒まれた。

 このとき魏の諸城の中には、諸葛亮の軍勢を恐れ寝返る者が出ていた。そのため、天水郡の太守をはじめとする有力者たちは、みな疑心暗鬼となっていた。姜維は実力者であったために警戒され、味方に締め出されてしまったのだ。

 愕然とする姜維だったが、悩んだ末、大きな決断を下す。それは… 続きを読む… 続きを読む

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上永 哲矢

上永 哲矢

歴史著述家・紀行作家。日本の歴史、および『三国志』をはじめとする中国史の記事を多数手がけ、各種雑誌やWEBサイトに寄稿、連載を持つ。全国各地の史跡を取材し、城や温泉にも造詣が深い。著書に『三国志 その終わりと始まり』(三栄書房)、『偉人たちの温泉通信簿』(秀和システム)など。神奈川県出身。

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