先発完投が当たり前の時代に「鹿取・角・サンチェ」の中継ぎリレーを考案
まるで雲の上にいるような偉大な人――。それが王貞治さんだ。現役時代は巨人の主力選手としてV9に貢献。通算本塁打868本塁打を記録し「世界の王」と評された輝かしい経歴は誰もが知っているだろう。引退後の王さんは古巣の巨人で1984年から5年間に渡って監督を務められ、自分もお世話になった。
昔の巨人ファンの方々ならば「鹿取・角・サンチェ」と聞くと「おぉ~っ」と懐かしんでいただけると思うが、これは右腕のサイドスロー・鹿取義隆と、右腕のサンチェ(ルイス・サンチェス)、そして左腕の私で形成されたリリーフ投手のユニット名。まだ先発完投が当たり前だった時代に、試合の中盤以降を先発投手からバトンを託された鹿取とサンチェ、私の中継ぎリレーで勝ちにいくという必勝パターンを考案したのは、何を隠そう王監督だった。プロ入り前の早稲田実業時代に投手としても活躍していた王監督は「投」の面でもこうした斬新な起用法が光り、投手陣にもくまなく目を配っていただいた。
真摯で誠実な性格。そして理想を追求し、具現化するためには人一倍の努力を怠らない。ジャイアンツの指揮官に就任した王監督は、これまで自らが実践してきたモットーを我々選手たちに教えようと常に懸命だった。
“世界の王”の肩書きが、選手との間に微妙な距離感を生む
しかし……今だから明かせるが、正直に言うと、この頃の私はどちらかと言えば王監督とあまり相性が合わなかった。… 続きを読む