みなさんこんにちは、元・プロ野球選手の角盈男です。私は、長島茂雄監督・藤田元司監督・王貞治監督・野村克也監督という、球界を代表する4人の名監督の元でプロ生活を送りました。特に長嶋監督、野村監督の元では、監督とコーチという立場でも関わりました。ここまで名だたる監督に指導を受けているのは、球界広しと言えども、私ひとりではないでしょうか!?
この連載では、名監督の元で実際に体験した事を交え、何が凄かったのか、何が名監督と呼ばれる所以なのかを、私が感じたままを書かせて頂きました。期待して下さい。初回は、プロ入り時に指導を受けた長島茂雄さんです。
諦めの境地にいた私を奮い立たせた心理作戦
私にとって長嶋茂雄さんは「実父」のような人である。中国地方の社会人チームからプロの世界に入り、右も左も分からなかった新米の自分にプロフェッショナルプレイヤーとしての技術と心構えを叩き込んでいただいた。今でも、あの当時の記憶は鮮明に脳裏に焼き付けられている。
プロ野球の読売巨人軍に入団し、1978年2月から始まったプロ1年目の宮崎キャンプ。指揮官を務めていたのが、長嶋さんだった。並み居るスーパースターたちの練習風景を目の当たりにして「こんな世界で生き残れるのか」と半ば諦めの境地で投球練習に励んでいると、長嶋監督がブルペンに現れて私にこう言った。
「どれ、角。いい球が来てるかな。オレが球威を見てやろう」
練習とはいえ、あの長嶋さんがバットを持たずに目の前でブルペンの打席に立っている。心臓の鼓動が急に高鳴り始めた。間違ってぶつけてしまったら、それこそ一大事。何度も大きく深呼吸をして精神を落ち着かせようとする自分をあざ笑うかのように長嶋監督は、こう続けた。… 続きを読む