山を聖なるものとして崇める山岳信仰は世界中に存在する。
2013年に世界遺産に登録された「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」がその一例だが、日本だけでも霊山と呼ばれる山は50を超える。
なぜ人は山に神を見るのだろう? 今回は世界遺産に登録された「聖なる山」を紹介する。
マオリの聖地「トンガリロ国立公園(ニュージーランド)」
山は世界中で神の造形物として崇められてきた。それは天により近いからであり、火山によって土地を造るからであり、豊かな栄養分を含む水をもたらし山の幸を恵むからなのだろう。その典型が富士山で、火の神や産みの神として平安時代以前から畏敬されてきた。
同じような伝説は世界中に残っているが、代表的な例がニュージーランドのトンガリロ山、ナウルホエ山、ルアペフ山を中心とする活火山地帯だ。
熱は生命と世界を動かす原動力。新しい土地を求めて航海を続けていたマオリ人の祖先たちが海で凍えていたとき、トンガリロをはじめとする山々が噴火によって彼らを暖め、窮地を救った。マオリ人たちはそれ以来トンガリロ周辺を聖地として祀り、首長の遺体を山に埋葬しているのだという。
人に幸を与える山を愛し敬わなければならない。これがマオリの教えだ。しかしイギリスの植民地支配を受けて入植者が増えると、山にも鉱山や牧草地・リゾート地として開発の手が伸びる。… 続きを読む