いろんな新しい味が開発されているラーメン業界。最近の注目は「烏賊(イカ)出汁」。限定メニューで出すところが増えており、中には定番メニューで提供する店も登場。今回は話題の3軒を紹介する!

 

2007年、限定メニューで登場

 「スルメ」は昔からラーメンの隠し味として使われてきた。そのスルメを隠し味ではなくふんだんに使ってラーメンを作ると……。

 そんな実験的なラーメンを作ったところがかつてあった。「麺屋武蔵二天」(池袋)が2007年5月に限定メニューとして発売したのであった。その時のことが私のブログに書かれているので引用する。

 「麺屋武蔵二天@池袋の新限定メニューは『鯣(するめ)そば』。名前の通り、するめイカをふんだんに使用して作ったもの。スープ、醤油タレ、香油には乾燥鯣イカをたっぷり使い、風味、旨みを抽出。上に乗っているさつま揚げは、生鯣イカのすり身にゲソのぶつ切りを加えて作成」。その後の感想としては「かなりイカ臭いが、実においしい」と記していた。

 

限定メニューで出す店は多いが、なぜ定番メニューにならない?

 それから7〜8年の時を経て、限定メニューで「烏賊出汁」のラーメンを出す店が増えてきた。最近、限定メニューで「烏賊出汁」、または「烏賊煮干し」と謳われるラーメンを出したところを列挙してみると、おおぜき中華そば店(恵比寿)、らぁめん小池(上北沢)、ラーメン燈郎(新小岩)、麺処晴(入谷)、(新宿)、煮干中華ソバ イチカワ(つくば)、麺や飛来(水戸)、豚骨らーめん れん(伊勢崎)、らーめん円満(長岡)などがある。

 「濃厚豚骨ラーメン」の回で紹介した無鉄砲(京都)でも「烏賊豚骨ラーメン」を出し、「大つけ麺博」ではそれをつけ麺にして都内の人を驚かせた。

 限定メニューではそれなりにいろんな店で出しているが、定番メニュー(通常メニュー)で出すところが少ないのは「一般受けしにくい」「店内が烏賊臭くなる」などが考えられる。

 

この香りが烏賊好きにはたまらない!「新橋 纏」

 そんな状況の中、定番メニューで「烏賊煮干しラーメン」を出す店が登場してきている。以下、3店を紹介する。

 「新橋 纏」がオープンしたのは2013年6月。「平子煮干しそば」を先頭メニューにしてはいるが、話題は「烏賊干し鶏白湯醤油そば」に集まった。開店した当時にも食べているが、今回改めて食べに行ってみた。

 写真は「烏賊干し鶏白湯醤油そば」に煮付けイカゲソ(国産するめいか)をトッピング。ビジュアルからして驚く。ラーメンには珍しいイカゲソがたくさん入っている。写真だけではわからないが、香りがまたすごい。当然ながら烏賊臭い。しかしまぁ、この香りは烏賊好きにはたまらない。イカの煮付けを思い出してもらえばいい。実際は鶏白湯スープに合わせているので「イカの煮付け味」とはまた違うが、想像する場合にはそれを思い出してもらえば間違いない。ベースの鶏白湯スープもしっかりしており、そこに魚介の替わりに烏賊出汁を合わせているかっこうだ。

 ラーメン店もかなりの数がオープンし、他店との差別化が必要。そういう意味において、この店の戦略は成功したと言えよう。先日食べに行った時はオープンして2年以上経っていたが、待ちが出るくらいの人気だった。定着しているのだろう。

 

バランスを取り万人受けの味に「麺屋つくつく」

 2015年9月にオープンした「麺屋つくつく」(池袋)は富山の食材を前面に押し出したラーメンを提供。富山白海老ラーメン、能登烏賊干し醤油ラーメン、濃厚ニンニクブラックラーメンの3種類のメニューがある。

 注目はやはり「能登烏賊干し醤油ラーメン」でる。店内表示によると「真イカのワタから造った魚醤油『いしり』を使用」となっている。出汁にがつんと烏賊が効いた感じではないが、個性のある醤油味になっており、なかなか面白い味わい。烏賊出汁を期待して食べに行くと肩透かしに合いそうだが、烏賊干しの面白い使い方をした新しいタイプのラーメンであることは間違いない。むしろバランスを取って万人向けにまとめあげた、というイメージ。

 

オープン当初から話題になったこだわり店主の店「麺屋ねむ瑠」

 開店する前からラーメン好きというよりはグルメ仲間の間で話題になっていた「麺屋ねむ瑠」(本郷三丁目)。店主がFacebookをやっていたこともあり、SNSでも開店前から頻繁に紹介されていた。オープン時には20人近くの行列ができ、結構な待ち時間となった。

 ウリのメニューは「濃厚烏賊煮干中華そば」である。店内表示によるとベースのスープは鶏のモミジ(足)と手羽先で取った鶏白湯スープ。別に三種類の煮干しと烏賊の煮干しからスープを取り、いろいろ処理をした後、混ぜ合わせる。旨味調味料は使っていないようだ。返し(タレ)には「能登ヤマサのいしる」とブランド醤油2種類をブレンドして使用している。

 こちらも烏賊出汁が突出しているわけではないが、十分に烏賊を感じさせてくれる。そして全体をバランス良くまとめてあり、マニアにも一般的にもおいしく味わえるような絶妙なバランスになっている。

 そしてこの店の特筆すべきはもう一つ。「そのまま食べれる替え玉(油そば風)」というメニューがあるのだが、簡単に言ってしまえば量が足りない人向けの替え玉。しかし、この替え玉、メニュー名にもあるように、そのまままぜそばとしても食べられるようになっており、おいしくてスープに入れずに食べてしまうほど。もちろんスープに入れてもおいしい。2度も3度も味の変化を楽しむことができる逸品だ。

 

 まだまだ一般化していない「烏賊出汁」「烏賊煮干し」だが、日本人には受ける味わいだと思う。「先物買い」が好きな人はぜひ、今回紹介した3軒に足を運んで欲しい。斬新なその味わいにクセになることであろう。

※ 掲載している情報は、記事執筆時点(2015年11月15日)のものです。

大崎 裕史

大崎 裕史

株式会社ラーメンデータバンク取締役会長 日本ラーメン協会理事

毎年駒沢オリンピック公園で開催されている東京ラーメンショー実行委員長。自称「日本一ラーメンを食べた男」(2016年11月で約23,000杯)として雑誌やテレビに出演。ラーメン集合施設やカップ麵などの監修も多数の実績あり。著書として「日本ラーメン秘史」(日本経済新聞出版社)、「無敵のラーメン論」(講談社現代新書)、他。

関連キーワード

連載記事