なぜ○○が世界遺産で××が世界遺産ではないのだろう? こんな疑問を持った人は少なくないはずだ。
伊勢神宮に大仙古墳、桂離宮に鎌倉等々、世界遺産にふさわしいと思われる建物が日本にはまだまだたくさんある。
今回はこれらの建物がなぜ世界遺産になれないのか、その疑問に迫る。
なぜ伊勢神宮は世界遺産ではないのか?
昨年、式年遷宮で話題になった伊勢神宮。式年遷宮とは20年に一度、神宮の社殿を建て替えて神座を遷す儀式で、飛鳥時代から約1,300年の歴史を持つ。個々の細胞が死ぬことで私たちの身体がみずみずしく保たれているように、死と生を繰り返すこの世の様=常若(とこわか)を表現している。
そして伊勢神宮の主な社殿は弥生時代の高床式倉庫を思わせる唯一神明造。日本最古級の神社建築で、切妻屋根をはじめとするデザインはその後の日本文化に多大な影響を与えた。
これほど世界遺産にふさわしい建物もないと思われるし、2004年に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産としても登録できたはず。それなのになぜ世界遺産ではないのだろう?
よく言われるのが先の式年遷宮だ。「建て替えが保護を目的とする世界遺産の精神にそぐわない」というが、世界遺産「古都京都の文化財」の上賀茂神社や下鴨神社でも式年遷宮が行われているし、ポーランドの「ワルシャワ歴史地区」やイランの「バムとその文化的景観」のように戦争や天災で破壊されたのち修復された世界遺産は数多い。
世界遺産に登録するためには、まず所有者や自治体がその意志を表明しなくてはならない。伊勢神宮や出雲大社についてはこれがまだ明確になされていない。「世界遺産になる必要がない」ということなのかもしれない。… 続きを読む