世界遺産を訪ねたい! そう思っても時間もお金も掛かるし、海外の世界遺産に行くのはそんなに簡単なことではない。
でも、「訪ねる」以外にも世界遺産を楽しむさまざまな方法がある。今回はトカイワインとポートワインを通して「味わう」という世界遺産の楽しみ方を紹介したい。
「ワインの王」トカイワイン
「私の中には太陽が宿っている」と言い放ち、神の使いとして地上を治めることを宣言したフランス国王ルイ14世。ベルサイユ宮殿(世界遺産)を建設し、フランス料理(無形文化遺産)を確立して絶大な権勢を世に知らしめた。
フランス産のワインを愛するルイ14世だったが、黄金色に輝くハンガリー産のワインを口に含むやこう叫んだという。
「これぞ王のワイン。これぞワインの王」
これ以来、世界中の王がこのワインを買い求めたという。
このワインを生産しているトカイ村にはこんな伝説が残っている。
17世紀のある秋、オスマン帝国がこの地に攻め込んで来ると、村人たちはブドウの収穫をあきらめて村から待避する。村人にとってワイン生産はほとんど唯一の生活の糧。帝国軍が去ったあと大急ぎで帰還するが、ブドウは腐敗していて干しブドウのように変形していた。
人々はあきらめ切れず、そのブドウを収穫してなんとかワインを醸造する。そしてできあがったワインを口にして驚愕した。
「なんて高貴な腐敗なんだ!」
貴腐ワイン・トカイの誕生だ。… 続きを読む