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生産性向上とは?日本の企業が生産性を向上させるためのポイント
2021.03.22

働き方改革&生産性向上のカギはどこにある

生産性向上とは?日本の企業が生産性を向上させるためのポイント

著者 Bizコンパス編集部

 労働人口の減少や国際競争の激化から、各企業の生産性向上が叫ばれています。

 ただでさえ生産性が低いと言われている日本。生産性を向上させなければ、労働人口の減少により生産性が今よりも低下する上、国内市場シェアを国外の製品やサービスに取られてしまう可能性も十分に考えられます。

 そこで今回は、生産性向上の基本知識を確認した上で、生産性を向上させるポイント、生産性向上を失敗させないために気を付けたいポイントなどについて説明します。

生産性向上とは?

 まずは、「生産性向上」という言葉の意味から、改めて確認していきましょう。そもそも、「生産性」の定義とは、企業が用意した経営資源に対してどれだけの成果を生み出すことができたかという、効率の度合いを意味します。

 すなわち生産性向上とは、「今の成果のまま経営資源を減らす」もしくは「同じだけの資源で成果をさらに上げる」の二択のことを指します。どちらかと言えば、業績を伸ばしたい多くの企業では、後者が求められがちです。

 最小限の投資で最大限の成果を生み出すこと、いわゆる「生産性向上」は、少子高齢化による労働人口の減少や国際競争力の低下など、多くの問題がある日本にとって、進んで取り組むべき重要な課題となっています。

生産性向上と業務効率化の違いについて

 生産性向上と業務効率化は、よく似たような場面で使われますが、実は似て非なるものです。業務効率化とは、「業務改善のための取り組み」であり、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を省くことを指します。成果を求めるものではありません。改善内容を指すものです。

 一方、生産性向上は、限られた投資の中で、最大限の成果を出すことであり、求められているのは、もちろん成果です。 要するに、これらは手段と結果の関係であり、「業務効率化」は「生産性向上」のために成されるものということです。

生産性向上が求められる理由

 生産性向上が求められる理由には、経営の観点から、大きく2つのことが挙げられます。具体的には、以下のような内容です。

■ 労働人口の減少

 2020年5月に総務省が出した「労働力調査」の結果によると、2020年の労働人口は6,854万人となっており、前年同月と比べて44万人減少しています。

 また、パーソナル総合研究所と中央大学が発表した「労働市場の未来推計2030」では、生産年齢人口は2030年に6,656万人(人口全体の57.2%)、2060年には4,505万人(人口全体の50.7%)になると予測され、人口の約半分が就業できない老齢人口で占められると考えられているのです。

 働き手がいなくなり、人手不足の状態になることが見越された今、これまで以上に一人ひとりの生産性が求められています。

※参考:総務省「労働力調査」
※参考:パーソナル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」

■ 国際競争の激化

 Webによって海外のものを容易に購入できるようになった現在、日本の企業は常に海外企業との競争にさらされています。国際競争が激化している中、生産性を上げられないままでは、日本国内の市場シェアは、あっという間に海外の企業に取られてしまうでしょう。

 日本は生産性が非常に低い国と言われており、OECD(経済協力開発機構)データに基づく2018年の日本の時間当たり労働生産性は46.8ドル(4,744円)で、OECD加盟36カ国中21位でした。

  このままの生産性では、海外企業と対等に渡り合っていけないどころか、仕事自体が回らなくなってしまいます。

※参考:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2019」

生産性を向上させるポイント

 生産性向上のために日本の企業が行うべき取り組みはさまざまなものがありますが、その中でも特に注力したいのは、以下の4つのことです。

■ 現状の把握と課題の分析

 まずは自社の課題が何かを洗い出し、現状の把握と課題の分析をすることが必要です。

 課題の洗い出しがうまく進まない時は、フレームワークなどを利用すると、問題の抽出をスムーズに行えます。問題の原因を「なぜ」という疑問により掘り下げていけば、最適な解決法に到達できる可能性が高まります。

■ 業務の可視化を行う

 戦略的な生産性向上を行うためには、業務の可視化が欠かせません。というのも、組織やチームの現状を正しく把握することができれば、省ける無駄は省き、その分のリソースを「成果に繋がる業務」にあてることができるからです。

■ ITツールを活用する

 IT技術は、目まぐるしく進歩を遂げています。自社の特性や組織構造、業務内容に適したシステム、ツールを導入し、積極的に活用することで、労働環境に良い変化をもたらすことができるかもしれません。

 たとえば、農業などの領域でIoTを利用すれば、厳密な温度管理や稼働情報のリアルタイム収集はもちろん、リモートによる環境管理などを行うことができ、業務効率化につながります。業務効率化に成功すれば、空いたリソースを生産性向上にあてられるのです。

■ 適切な人材を配置する

 得意分野やチームメンバーとの関係によって、同等の業務でもパフォーマンスに差が出ることはよくあることです。生産性向上のためには、それらを踏まえた上で、適切な人材配置は欠かせません。

 各々の特性を理解しないまま不適切な人員配置を行ってしまうと、生産性は落ち込むでしょう。適材適所な人材配置を行うことができれば、各々が得意分野で力を発揮することができるため、自ずと生産性も向上するはずです。

生産性の測り方

 生産性は、「アウトプット(産出量)」を「インプット(投入量)」で割った式で算出します。式は以下のようになります。

生産性 =  アウトプット(産出量) インプット(投入量)

 企業では、さまざまな部品や資材を購入し、エネルギーを使用して加工機械を動かし、人(労働力)を使ってその企業の製品を生み出します。原材料やエネルギー、労働力や資金を購入し、企業独自の生産技術や加工によって、製品を販売もしくは生産しているわけです。

 この購入のことを「投入」または「インプット」と呼び、販売のことを「産出」または「アウトプット」と呼びます。企業の事業内容によってこれらの内容は変わりますが、企業が製品やサービスをつくるにあたって購入したものがインプット、それを販売・提供することがアウトプットというわけです。

 これらを上記の式にあてはめると、生産性の算出ができます。

生産性が落ちる理由

 生産性向上を目指しているのに、逆に生産性が落ちてしまう行いをしている企業は、意外と少なくないものです。自社の労働環境下で、以下のことが常態化していないかの確認が必要かもしれません。

■ 長時間労働

 日本では未だに「長時間労働=偉い」という企業文化が根付いている企業は残っています。しかし、長時間労働は生産性を著しく低下させる恐れがあります。

 長時間労働を続けるとストレスや疲労が蓄積し、集中力や判断力が鈍るのは有名な話。

 そんな中で業務を続けても、進捗が遅れるばかりか、ミスや事故に繋がってしまうことも考えられます。

■ マルチタスク

 人間の脳の構造上、ふたつ以上の物事を並列処理することは難しいと言われています。

たとえふたつ以上のことを同時並行しているように見えたとしても、それは脳のスイッチをめまぐるしく替えているだけに過ぎません。脳に負荷をかけ続けては、ひとつのタスクの完了度合いが低下してしまう可能性もあります。

 別案件の資料を見ながら、関係のない取引先と電話でやり取りをしたり、その片手間に上司に返信したりしていると、いつかどこかでミスが発生してしまうこともあるでしょう。

■ 個人とチームの生産性のアンバランス

 チームで作業を行うと、メンバーの能力によって作業速度に差が出ます。こうした時にやってしまいがちなのが、「作業の早い人に、遅い人のタスクを巻き取らせる」ということです。

 チーム全体の作業スピードを上げるためには良い方法かもしれませんが、これは「仕事のできない人の負担が減り、仕事ができる人の負担が増える」という状態になっており、生産量の帳尻を合わせているだけです。あまり健全な状態とは言えないでしょう。

生産性向上を失敗させないために気を付けるポイント

 生産性向上のためにと打った施策も、かえって生産性を落としてしまう可能性もあります。そういった状況に陥らないためにも、生産性向上を失敗させないために気を付けるべきポイントを解説します。

■ やみくもに会議をしない

 チームの生産性を上げる際に障害になりやすいのが、実は「会議」です。もちろん、会議のやり方によりますが、普段の会議がやみくもに時間を浪費するだけのものになっていれば、変える必要があるでしょう。

 会議を行う上で大切なのは、目的をはっきりさせること。そして、できる限りその場で結論を出すこと。議事録は会議中に取るのではなく、あらかじめ会議に参加するメンバーに記入しておいてもらい、会議中はそれをスクリーンに投影するなどして、話の脱線を防ぎましょう。メンバーが議事録に追われることなく会議に集中できる環境が重要です。

 会議に参加させるメンバーを絞るというのも良いでしょう。会議に参加させるメンバーを一定の職種などに厳選することで、議題に対してより専門的な深掘りすることができ、会議での生産性も上がる可能性があります。

■ マルチタスクを低減させる

 同時にふたつ以上の作業を並行するマルチタスクを行うと、「仕事の進みが早い」と感じる場合が多いです。

 しかし、実際には効率的に仕事を進めているような錯覚に陥っているだけ、という可能性もあります。先ほども少し触れましたが、マルチタスクは、脳の注意を瞬間的に切り替えているだけで、エネルギーを大量消費し、脳に負荷がかかります。その結果、頭の回転が遅くなり、ミスが増え、結果的に生産性を下げてしまうことに繋がりかねません。

 生産性向上を目指すのであれば、マルチタスクをできるだけ減らし、従業員がひとつの業務に全力を注げるような環境を整えるほうが良いでしょう。 

■ 個人の生産性を意識しすぎない

 チーム単位でプロジェクトを進める場合、個人の生産性を求めるあまり、チームの生産性を低下させてしまう場合があるので、注意が必要です。

 たとえ仕事のできる人に多くのタスクを振って、それらの完了率が100%になったとしても、一つひとつのタスクの「完成度」は、ひとつのタスクに集中している時ほどのものではないかもしれません。

 そうならないためにも、メンバーの得意分野を把握し、各々に得意な業務を均等に任せたほうが、最終的な完成度が上がる可能性があります。

生産性向上の事例

 国内企業でも、さまざまなITツールを活用した業務のデジタル化によって生産性を向上させています。

■ 株式会社公文教育研究会(KUMON)

 株式会社公文教育研究会(KUMON)では、日本国内で16,200の教室、14,100人の先生が子どもたちに「学び」を提供するため、社員間や先生方との密接なコミュニケーションによる「社員個人の生産性向上」「社員同士の連携強化」の体制づくりが欠かせません。同社ではその一環として、スマートフォンを有効活用しています。

詳しくはこちら

■ NTTコミュニケーションズ株式会社

 NTTコミュニケーションズ株式会社では、業務で社外に移動した時に発生する旅費を社員が立て替えて支払い、月締めで会社に都度で請求する旅費申請の作業を「旅費精算の申請自体を無くす」という根本的な方法で解消したといいます。一体、どうやって解決したのでしょうか。

詳しくはこちら

生産性向上は急務。できるところから対策を

 生産性の向上は、今後の日本を支えていくためにも急務です。それぞれの企業が生産性を少しずつでも向上させていかなければ、グローバル時代から取り残されてしまう可能性も考えられます。

 さらに、労働人口は今後どんどん減っていくため、これまでの生産性を維持するだけでなく、向上させていかなければなりません。メンバー一人ひとりの生産性を向上させ、チーム全体の生産性の底上げをする必要もあるでしょう。まずは、できるところから手をつけていことから始めてみましょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

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