第1回、第2回と、インバウンド・マーケティングにおけるコンテンツの考え方について解説してきた。こうなると、これがただの自己満足ではなく、本当にビジネス上の役に立つのかというのは気になるところではないだろうか。しかし、中小企業などの生々しい事例があまり世の中に出ていない。そのため、実現可能性やその効果について疑問を持つのは致し方無い。しかし、結論から言えばこれは「役に立つ」と言えるのだ。
そこで今回は、海外のエキスポでも発表された、有名なマーケティング事例をご紹介する。きっと、コンテンツの力を感じ取ってもらえるはずだ。
リーマン・ショック直後の世界をコンテンツの力で乗り切り、売上を伸ばした企業とは
2008年9月に起きたリーマン・ショック。大きな原因の1つは、証券化されたサブプライム層向けの住宅担保ローンだった。結果として、住宅関連業界は一気に冷え込むことになる。それは、今回紹介する企業「River Pool and Spa社」も同様だった。
同社はアメリカにある住宅向けのプール販売会社であり、そのため不動産業界の低迷の影響を大きく受けていた。同業者の多くは倒産し、River Pool and Spa社も同様に厳しい状況に陥った。しかし結局同社は倒産するどころかむしろ売上を伸ばし、そしてリーマン・ショックからの回復にも乗りながら、売上を右肩上がりに伸ばし続けている。
なぜそんなことが可能だったのだろうか。そのキーはWEBサイトの活用、具体的にはコンテンツの活用、つまりインバウンド・マーケティングだった。きちんとコンテンツを作りWEBサイトに公開しつづけたことによって、競合他社の顧客を奪い、シェアと売上を大きく伸ばしたのである。しかしコンテンツの活用で顧客を奪うとは、果たしてどんなことを行なったのだろうか。
具体的にどんなことを行なったのか?
同社の経営者であるMarcus Sheridan氏が行なったこと、それを一言で表せば「お客さんの知りたいことを、WEBサイト上にコンテンツとして掲載した」だ。しかしこれだけだと旧来からあるFAQと何ら変わりがないように感じる。しかし、それが旧来のFAQなどと異なるのは
・とにかく「顧客目線」の内容を
・どこよりも詳しく、たくさんの文章と画像で
・お客さんが不安に思うこと悩むことは全て掲載した
という点だ。
よくある「FAQ」。これは箇条書きのようなものが多いだろう。したがってボリュームは1項目200文字程度ではないだろうか。また、ページ数もせいぜい2~3ページではないだろうか。
しかし、同社は違った。記事まるごと1つを使って、その質問に明確に詳細に答えたのだ。
例えばこのページを見ていただきたい。実際の同社のサイトだ。
「Top 5 Fiberglass Pool Problems and Solutions(ファイバー製のプールでよく起きるトラブル5つと、その解消法)」というコンテンツである。このページを実際に見た時、文章の量は予想以上だったのではないだろうか。大体半角で10,000文字以上ある。単純に日本語と英語を比較できるものではないが、日本語であれば4,000から5,000文字くらいの分量だ。
このようなコンテンツはこれだけではない。経営者であるMarcus Sheridan氏はこのようなページをあっという間になんと800ページ以上作成した。「買い手が悩んでいることを、詳しく詳しくサイトに載せた」のだ、それも大量に。
当時のコンテンツそのままではないだろうが、例えば今のサイトにはこんなコンテンツがある。
・ファイバーグラス製のプール vs ビニールライナー製のプール vs コンクリートプール…その正直な比較… 続きを読む