金融機関が企業と融資取引をする際、決算書が大きなウエイトを占めるのは皆さんご存じでしょう。今回は金融機関が決算書をどのように見るのか、そして次回にその対策として、社長は税理士とどのように決算書作成に取り組んだら良いかを説明します。
貸借対照表のポイント
1.資産価値のないものはないか
金融機関は、貸借対照表の資産科目を利用して赤字を隠していないか、資産価値のないものはないか、という点をとても気にします。特に警戒して分析するのは以下の科目です。
図表1 融資担当者が注意する資産科目とそのポイント
科目名 |
融資担当者が見るポイント |
債権(受取手形、売掛金) |
架空の売上計上や翌期の売上を前倒しすることで利益を出すことは、最も一般的な粉飾の方法です。それに加えて回収不能なものがないかをチェックします。 |
棚卸資産(商品、原材料など) |
棚卸資産の期末残高をいじるだけで利益調整ができるため、売掛債権同様に粉飾がしやすい科目です。会社規模や同業他社と比べて棚卸資産が多くある場合は、粉飾か不良在庫があるのではと考えます。 |
貸付金および仮払金 |
赤字隠しや杜撰な経理処理を誤魔化すためによく利用されたり、金融機関からの借入金が社長への貸付金になったりすることが多いので、初めから資産価値がないという疑った見方をしてきます。金融機関が嫌いな科目といえます。 |
そのほかの科目(たとえば、株、本業とは無関係の不動産など) |
時価を調査し、簿価との差額を減額します。しかし、逆に時価の方が高くても、参考程度にしか見ないことが多いです。 |
2.実質債務超過ではないか
図表1の様な点に注意して、資産を実際の価値に直してみると、表面上は自己資本がプラスでも実際は債務超過になる場合もあります。

右側に純資産の部という項目があります。自己資本ともいい、簡単にいうと資本金と今までの利益の蓄積を表示しています。この合計(この例では16,500)がプラスかどうかはとても重要です。もしマイナスなら債務超過といい、金融機関がとても嫌う状態です。
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