デジタル化の波が進む中、テレビやラジオをはじめとするメディア業界は、視聴形態の多様化の波にさらされ続けている。その中で、昨今のスマートデバイスの台頭に伴い、「モバイルシフト」の波が押し寄せてきている。そのような状況において、各企業とも多様な視聴形態に対応するための取り組みとともに、「コンテンツの魅力強化」にあらためて向き合おうとしている。
本編では放送事業分野にフォーカスし、業界の動向と課題、それらを踏まえたITの役割や可能性について述べていきたい。
視聴形態の変化と多様化の動き
◇深刻化が進む「テレビ離れ」
インターネットコンテンツをはじめとするテレビ以外のメディアの普及に伴い、2000年前後から、相対的な「テレビ離れ」が叫ばれてきている。過去において日本人は最もテレビを見ている民族であり、一日あたりの平均視聴時間が5時間という時期も存在した。しかしながら、昨今では平均視聴時間は年々減少してきており、その傾向はとりわけ若者において顕著となっている。
中でも10代、20代については、テレビ(リアルタイム)視聴時間とインターネット利用時間が半々(10代はインターネットが優勢)となっていることもあり、テレビが娯楽の中心であった時代は終息に向かっているといっても過言ではない。

この状況は米国においても同様であり、若年層とネットワーカーは、テレビ以外のインターネット、携帯電話、ビデオゲームといった多様なコンテンツを選択している傾向が見受けられる。
◇録画視聴による「CMスキップ視聴」への課題
テレビコンテンツの視聴形態においても、昨今はHDDへの自動録画機能を活用してコンテンツを楽しむ傾向があり、リアルタイムでの視聴機会が減少しつつある。録画を視聴する際は、CMカット機能を搭載したレコーダーの利用ユーザーのうち、約半数がCMをカットしており(2005年に野村総研の調査による)、広告収入を基本とする民間放送においては深刻な問題となっていた。… 続きを読む