最近、注目を集める「デスクトップ仮想化(VDI/Virtual Desktop Infrastructure)」。その導入方法にはオンプレミス型とクラウド型の両方がある。クラウド型のサービスである「DaaS(Desktop as a Service)」は、導入コストを安く抑えてスピーディーに始められるだけでなく、情報システム部門の作業負荷を軽減するなどといったメリットもある。DaaSを中心としたVDIの現状について紹介する。
「Windows XP」のサポート終了でVDIを検討
「いつでも、どこでも、どんなデバイスでも、オフィスにある自分専用のデスクトップPCと同じ環境で仕事ができる」。これを実現すれば、ビジネスパーソンはより柔軟な働き方を選べるようになるだろう。一昔前には考えられなかったこのような仕事環境が、すでに現実のシステム、サービスとして提供されている。それがVDIなのだ。
現在、企業の情報システム部門を中心に、VDIに注目する動きがある。その理由として大きく3つのことが考えられる。
1つは東日本大震災の影響。公共交通機関が利用できなくなったため、社員がオフィスに出社できなくなったり、計画停電が実施されてその間オフィスのPCが使えなくなったりした企業が数多くあった。そこで、VDI導入により自宅などでも仕事ができる環境を用意し、BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)をより堅固にするという選択肢がクローズアップされたのだ。
2つめは働き方の変化。少子高齢化に伴い、高齢者や女性の労働力を活用する必要性が高まっている。そのためには、彼らが働きやすいようにワークスタイル改革を行なったり、ワークライフバランスを実現したりすることが重要になる。そこでVDIを導入し、在宅勤務を行なえるようにしようというわけだ。
3つめは「Windows XP」のサポート終了。日本マイクロソフトは2014年4月9日でWindows XPのサポートを終了すると発表した。それに伴い、企業において利用中のWindows XP 搭載PCを「Windows 7」あるいは「Windows 8」搭載の新しいPCに買い替えることが考えられるが、それには大きなコストがかかる。そこで、使用中のPCはそのまま活用する、あるいは“シンクライアント端末”(ほとんどの処理をサーバー側に集中させ、端末自体は必要最小限の処理しかしない)を購入する、といった方法でコストを抑え、それら端末にVDIを導入することが検討されているのだ。
導入コストを抑えて素早く始められる「DaaS」
こうしたことを理由としてVDIに注目が集まっているが、なかでもクラウドコンピューティングを活用した“DaaS”の導入を検討する企業が増えている。
オンプレミスでVDIを導入する場合、自社独自のカスタマイズができるというメリットがあるが、他方、自社でサーバーを設置しなければならないため導入コストがかさむ、導入後は情報システム部門が運用管理しなければならず負担が増える、自社にサーバーを置くとBCP対策として機能しにくい、といったデメリットもある。
DaaSの場合、サーバーはクラウド事業者が用意するので導入コストが安く済む。スピーディーに始められる点も見逃せない。また、基本的に運用管理もクラウド事業者が行なうので、情報システム部門にかかる負荷は少ない。クラウド事業者の堅牢なデータセンターでサービスを提供するため、セキュリティ・BCPの面からも安心である。
他方、DaaSの場合は月額料金がずっと発生し続けるため、長期間にわたって同一環境で利用する場合などは、… 続きを読む