「世界でもっともよく通じるのは、どの言語と思う?」と、周りにいる人たちにアットランダムに質問してみよう。十中八九が「英語じゃない?」と答えるのではないだろうか。しかし自国の言語こそが最もよく通じるのだ! と主張する人たちも、中にはいるかもしれない。たとえば、スペイン国内で同じ質問を投げかけたとすればまず、「世界でもっともよく通じる言語? そりゃ、スペイン語に決まってるでしょ!」と答える人がほとんどだろう。
スペイン人の誇り
確かにスペイン語は、公用語として本国のみならず南米でも用いられており、使用者数が多い言語のひとつであることに間違いはない。スペイン人たちが胸を張って母国語を誇るのも、当然といえば当然だろう。
これを反映するかのごとく、世界各国から観光、ビジネス、留学などの目的を持った人びとが集中する首都・マドリードでも、英語で難なく会話が交わせる人を探すのはなかなか難しい。しかしこれは、彼らが自国語を誇るがゆえ、「誰に対してもスペイン語で話すのが基本」と頭ごなしに決め込んでいるためではない。彼らに尋ねてみると、スペイン語と英語の発音はあまりにも違うため、話せてもヘタに聞こえるから披露するのはちょっと恥ずかしいという意見がほとんどだった。つまり、「わかっちゃいるけど話したくない」というのが言い分のようだ。

この現象はマドリードに限ったことではない。市であっても村であっても、観光地でもビジネスの場でも大体同じようなものだ。英語で質問したり注文を出したりすると、… 続きを読む