京都にはさまざまな観光名所がありますが、社寺や名所にある庭園を巡る楽しさも見逃せません。長い歴史の間に造られた数多くの庭園があり、敷地の一部に作られた「坪庭(つぼにわ)」や、石や砂で山や水を表現する「枯山水(かれさんすい)」、池を中心に作庭する「池泉廻遊式(ちせんかいゆうしき)」などバラエティに富んでいます。
それぞれの庭園には造られた時代の歴史や文化が反映され、ゆかりのある人々の想いが込められています。前回は、京都の北東部「北山・岩倉」エリアの庭園にスポットを当てましたが、最終回は「嵐山・嵯峨野」近辺の庭園を紹介します。
平清盛からの愛を失った女たちが集った庭園
京都の街の西部にある「嵐山・嵯峨野」といえば、京都でも屈指の観光地です。紅葉の山を背にした渡月橋や、両脇が青竹に囲まれた竹林の道を通った人も多いはずです。平安時代の頃から貴族の行楽地、別荘地だったため、いまでも庭園が多く残っています。
まずは、そんな平安時代の庭園から見ていきましょう。JR線・嵯峨嵐山駅の西にある「祇王寺(ぎおうじ)」です。

祇王寺は、浄土宗の開祖・法然の弟子が創建した「往生院(おうじょういん)」を起源とする寺です。当初は広い敷地を有していましたが、やがて荒廃してささやかな尼寺となり、後に当地に隠棲した「祇王」という白拍子(しらびょうし、当時の女性の踊り子のこと)にちなんで祇王寺と呼ばれるようになりました。
平家物語によると、平清盛の寵愛を失った祇王が、… 続きを読む