お客さまからの要望にはできるだけ対応したいところですが、現実的に対応ができない場合があります。そのような時に、角を立てたくないばかりに回りくどい言い回しで返信をしてしまうと、できるのかできないのかが相手に明瞭に伝わらず、相手が都合良くできると解釈した場合には、後で取り返しが付かない事態になりかねません。
ではどのようにすればこちらの意図をきちんと伝えられるでしょうか。今回は適切な断りメールの書き方を紹介します。
たとえば短納期の依頼を受けて下記の様に返信したとします。
5月15日までに10,000部の納品は、弊社にとっては大変厳しい納期でございます。
今後とも、一層の努力を行って参りますので、よろしくお願いします。
上記のメール文では、書き手は「できない」と回答したつもりが、読み手は「何とかなるようだ」と解釈してしまい、後日大きな問題となるでしょう。ここはやはり、下記の様に明確にできないことを伝える必要があります。
5月15日までに20,000部納品とのご依頼ですが、工場と調整したところ、ご指定の納期では製本工程が間に合わないことがわかりました。
大変申し訳ございませんが、ご要望に添うことができません。
一方、無理ばかりを要請してくる相手で、できれば関係を断ちたい場合は、きっぱりとした断りの意思をシンプルに伝えるメールを出す必要があります。
断りのメール形式
メールで相手に失礼が無いように断りを入れるには、ただ断りの意思を表示するだけではなく、いくつかの手順を踏む形式が有効です。
(1)まず、自社に打診をしてくれたことに対するお礼を述べます。これは、自社を選んでくれたことや、ここなら何とかしてくれるのでは無いかと頼ってくれた事へのお礼になります。
(2)次に、断るに当たって、こちらも十分に検討努力を行ったことを伝えます。決していい加減に即答したのではないことを表します。
(3)そして丁寧ながらも明確に、対応できないことを伝えます。表現としては「ご要望に添うことができません」や「お引き受けいたしかねます」、あるいは「お役に立てそうにありません」といった柔らかい言い回しになります。
(4)その後、断る理由を簡単に示し、可能であれば代替案を提案することで、誠意を示します。
(5)結びには、今回は断らざるを得なかったが、今後もおつきあいいただきたい、という意思を示してメールを終えます。
一方、これを機会に関係を断ちたい場合は、上記の(2)と(4)、(5)の全てあるいは一部を省くことで、余韻を断ちます。
断りメール使い分けサンプル
前述した断りメールの形式に沿って、2種類のサンプルを用意しました。前者は、今後も良好な関係を継続したい相手に対する断りのメールサンプルです。後者は、これを機会に関係を断ちたい相手に対するメールサンプルです。
株式会社○○○
宣伝部 伊勢さま
いつもお世話になります。
株式会社□□□ 営業部 原田です。
この度は、時計総合カタログの印刷・製本をご依頼いただきありがとうございます。
5月15日までに20,000部納品とのご依頼ですが、工場と調整したところ、
ご指定の納期では製本工程が間に合わないことがわかりました。
大変申し訳ございませんが、ご要望に添うことができません。
但し、5月17日に5,000部を先行納品させていただき、5月18日に残り15,000部を
納品させていただくという方法であれば対応可能でございます。
この納品方法をご検討いただくことは可能でしょうか。
誠に恐縮ですが、何卒上記事情をご理解いただき、今後も変わらぬお引き立てのほど、
よろしくお願いします。
──署名──
次に、今後は関係を断っても構わない相手に対するメールサンプルです。上記サンプルから代替案を削除してあります。
株式会社○○○
宣伝部 伊勢さま
いつもお世話になります。
株式会社□□□ 営業部 原田です。
この度は、時計総合カタログの印刷・製本をご依頼いただきありがとうございます。
5月15日までに20,000部納品とのご依頼ですが、工場と調整したところ、
ご指定の納期では製本工程が間に合わないことがわかりました。
大変申し訳ございませんが、ご要望に添うことができません。
誠に恐縮ですが、何卒上記事情をご理解いただきますよう、よろしくお願いします。
──署名──
いかがでしょうか。少々突き放したような印象を与えるかもしれませんが、常に条件の悪い仕事ばかりを投げかけてくるクライアントは、こちらが相当の努力をして対応しても、それを新たな基準にしてさらに困難な条件で仕事を投げてくることがあります。
このようなクライアントに対しては、無理なことは無理と明確な態度を示し、相手が譲歩するようであれば良好な関係を築ける可能性がありますが、絶対に譲らないようであれば、今後も悪条件の案件ばかりを投げてくる可能性が高いですから、曖昧な態度を示すことは避けた方が良いでしょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2015年3月31日)のものです。