Bizコンパス

DXの潮流、CDOの挑戦
2019.11.29

アクサ生命保険

顧客体験向上に必要なデジタルとアナログの最適配分

アクサ生命保険株式会社 執行役員 テクニカル&プライシング本部長兼チーフデータオフィサー 野島崇 氏

「インシュアテック(インシュランス+テクノロジー)」という言葉が使われるほど、保険ビジネスとデータサイエンスは相性が良く、DXの効果が大きい業界として注目されています。特に生命保険会社には、契約者の生活状況から将来の生活設計に至るまでの貴重なデータが蓄積されており、このデータを活用すれば、新たなビジネスを生み出し、競争優位につながると考えられ、DXの取り組みが積極的に進められています。

 世界をリードする保険ブランド「AXA」は、グローバルでDXに取り組んでおり、日本のアクサ生命も積極的にデータ活用を推進しています。今回、2018年6月1日付でCDO(チーフ・データ・オフィサー)に就任した野島崇氏に、CDOの役割や同社のDX戦略について伺いました。

【アクサ生命保険について-】

 アクサ生命は、欧州で200年の歴史をもつ保険資産運用グループAXAと、85年前に設立された日本団体生命が2000年に資本提携してできた会社です。

 日本では、少子高齢化、社会保障費の増加、低金利の長期化、デジタル化の進展、ライフスタイルの多様化など、人々を取り巻く生活環境が大きく変化しています。こうした生活環境が変化する中で、アクサ生命は「お客さまが自信をもってより良い人生をおくれるように寄り添う」との使命を掲げ、請求時に保険金や給付金を支払う「Payer」から、人々が抱える不安へのアドバイスや病気の予防などを包括的にサポートする、従来の保険会社の役割を超えた「Partner」になることを目指し、DXへの取り組みを推進しています。

 

顧客データを統合・構造化しなければDXは進まない

 従来の生命保険ビジネスは、契約締結までは営業担当者が何度も訪問し、保険設計書を細かく提示するなど、丁寧な接客を展開しますが、契約締結後は住所変更や請求のタイミングなど接点が極端に減ってしまい、契約者のライフスタイルの変化をしっかり把握できないことが課題とされています。こうした課題に対し、アクサ生命は、保険金支払者としての「Payer」の枠を超え、人生の「Partner」として寄り添うためにDXを推進しています。

「お客さまのライフスタイルや健康状態に関するデータを包括的に利活用して、最適なタイミングで最適なアドバイスを提供していくことが、これからの生命保険会社のあるべき姿です。私どもでは、そのような取り組みができて、はじめて新たな契約をいただき、長いお付き合いをいただけるパートナーになれると考えています。それを実現するには、現在、社内の各部門やディストリビュータ-などに分散しているお客さまのデータを統合し、すべての部門が利活用できるようにする基盤を整備しなければなりません」とCDOの野島氏は、データ活用の狙いと基盤の重要性を話します。

 顧客の期待にかなう、もしくは期待を超える保険の引き受けやアドバイス、サービスを提供するには、保険契約者に関するあらゆるデータを目的に沿って可視化および分析できるデータ基盤が欠かせません。しかし、アクサ生命では、これまでの見込み客に対するコンタクトデータや、営業担当者およびフィナンシャルプランアドバイザーが作成した提案書や設計書のデータ、保険加入後の取引に関するデータなどはメインフレームまたはプラットフォームと呼ばれる業務基盤に個別フォーマットで整理されないまま蓄積されており、包括的な利活用ができない状態でした。

「データ基盤が整えば、各部門の担当者がお客さまに関するすべての情報へリアルタイムでアクセスできるようになり、適切なアドバイスやサービスが可能になると考えています。こうした包括的なデータ基盤を整備することが、CDOの重要な役割のひとつです」

 野島氏はCDOに課せられたもうひとつの重要な役割として、整備されたデータ基盤を活用して経営戦略をサポートすることを挙げます。

「データはあくまでも戦略を支える装置に過ぎません。我々はお客さま一人ひとりのライフスタイルに適したアドバイスやサービスを提供することで、保険金や給付金の支払者であるPayerから人生に寄り添うPartnerになるというビジョンを掲げています。ビジョンの実現には、伝統的な保険商品の形にとらわれず、付帯サービスを仕組み化し、新たなプログラムやサービスを提供することが求められます。そのためにはデジタルを活用したダイレクトなコミュニケーションだけではなく、人的コンタクトによるアナログなコミュニケーションも必要だと考えており、そこはお客さまに合わせた適切な配分が必要だと考えています」

 

ツールやテクノロジーを活用してアナログな顧客情報をデジタル化

 DXの推進には社内に蓄積されたデータを、さまざまな部門の担当者がリアルタイムに利用できる環境が必要ですが、保険業界では、紙書類やコールセンターに寄せられる問い合わせや照会などアナログな情報をなくすことができないため、これがDX推進のハードルになっているといわれています。

 AXAグループでは、こうしたアナログな情報をデジタル化する方法として、… 続きを読む… 続きを読む

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