Bizコンパス

DXの潮流、CDOの挑戦
2019.08.09

デジタルトランスフォーメーション最前線

CDO討論会「日本の経営者は、DXへの切迫感がなさすぎる」

著者 Bizコンパス編集部

 デジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引するリーダーとして、この2~3年で国内の企業でも急激に増えている役職がCDO(最高デジタル責任者/最高データ責任者)です。しかし、「何に取り組めばいいのか」と立ち往生している企業は少なくありません。2019年7月19日に都内で開催された「Digital Innovation Forum 2019」では、国内の最前線でDXを推進しているCDOが3名集まり、各社のDXの目的や進め方、具体的な取り組み、直面している課題について議論。その様子をお伝えします(モデレータは、一般社団法人CDO Club Japan代表理事の加茂純氏)。

<参加者>
・株式会社三菱ケミカルホールディングス 執行役員 CDO 岩野 和生 氏
・ヤマハ発動機株式会社 フェロー 平野 浩介 氏
・株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役員 グループCDO 兼 経営情報統括部長 安田 裕司 氏
<モデレータ>
・一般社団法人CDO Club Japan 代表理事&創立者 加茂 純 氏

加茂 最初に簡単な自己紹介をしてから、今CDOとして取り組んでいる内容についてお話をいただけますか。

岩野 三菱ケミカルホールディングスの岩野です。私は数学科を出てIBMに入社して工場の生産管理システムなどを手掛けた後、プリンストン大学へ社内留学してコンピュータサイエンスを学び、研究者としてワトソン研究所へ移りました。IBM時代の後半10年は、クラウドコンピューティングやスマートシティなど社会を変革するソリューションの開発に携わりました。その後、三菱商事に転職、科学技術振興機構の仕事を兼務した後、現在の三菱ケミカルホールディングスに移り、今に至ります。

 現在はCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)として、ケミカル×デジタルを掲げてDXを進めているので、その概要をご説明します。

 我々はDXを「基盤づくり」「戦略的展開」「スケールアップ」という3つのフェーズで進めています。最初の2年間をファーストフェーズの「基盤づくり」と位置づけ、DXの認知・理解、デジタルの意義と型の共有、first of a kind(会社で誰もやったことがないこと)、共同プロジェクト、DXの武器づくりなどをテーマにした取り組みを進めてきました。現在はセカンドフェーズの「戦略的展開」に入っており、戦略的テーマの実施、現場運用の開始、デジタル戦略の策定、経営指標、人材育成、社内データ基盤、データポリシーなどに取り組んでいます。ここを終えて、最終フェーズの「スケールアップ」まで進めば、データ・ドリブン・カンパニーを目指し、DXの全社展開、アライアンスや新規事業の創造などに取り組むことになります。

平野 ヤマハ発動機の平野です。私は外資系IT企業で約30年働き、2017年4月にヤマハ発動機に転職、そこから2年間DXに取り組んできました。DXの取り組みと言っても技術的な話より、社長、会長を含む役員、事業部長と10年先の目標に向けたディスカッションに多くの時間を費やしてきました。

 目標の実現には戦略が必要ですが、今の時代はデジタル抜きで戦略は立てられないので、当然IT投資が必要です。しかし経営層は、今でもITはコストという認識を持っているため、目に見える業績向上やコスト削減につながるKPI・KGIを設定しなければ、投資を引き出すことは困難です。

 歴史ある製造業は製品を捨てることはできません。その歴史を引きずったままDXで勝つにはどうするべきか、私なりに悩んで出した結論は、逆張りで物づくりを活かす方法でした。シリコンバレーのスタートアップにはない物づくりとデジタルの合わせ技で新しい価値をつくる、それが我々のDXです。

加茂 安田さんは、日本で3人しかいないチーフ・データ・オフィサーのおひとりですから、ぜひデータ活用の視点で、DXの取り組みについて教えてください

安田 三菱UFJフィナンシャル・グループの安田です。私はおふたりと違い、25年以上同じ会社で働く典型的な日本のサラリーマンです。これまでリスク管理や事務・人事、店舗の業務を経験しましたが、いずれの職場でもデータを活用した施策や課題解決に取り組んできました。2000年に留学の機会をいただき、ベイズ統計およびデータ分析などを学びました。2017年12月にデータマネジメントの世界へ飛び込み、2019年4月からCDOとして業務に当たっているというのが、私の略歴です。

 当社のDXは、2つの大きな流れがあります。ひとつは「インプルーブ(改善)」です。これは従来のビジネスモデルでやってきたことをデジタルで省力化あるいは無人化、機械化する流れです。もうひとつは「ディスラプト(破壊的な変革)」で、新しいビジネス、新しいサービスを創造し提供する取り組みです。CDOの役割は、DXの鍵となるデータ収集の枠組みや品質確保のためのデータマネジメントの仕組みを構築し、AIに間違えたデータ食べさせない環境を整え、DXを推進していくことです。

 

日本の経営者は、DXに対する切迫感がなさすぎる

加茂 CDO Clubが実施した調査によると、日本の経営者は他国よりDXに対する切迫感がないという結果が出ています。皆さんの会社は違うかもしれませんが、そのような意識を変えるにはどうしたら良いと思いますか。

平野 日本の製造業は世界的な成功を収めた経験があることと、今も赤字ではないことが、切迫感を持てない理由だと思います。でも、… 続きを読む… 続きを読む

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