通常業務のやりとりは「メール」で行いつつも、急ぎや込み入った要件は「電話」で話した方が早いもの。取引先からの外線はもとより、社内の内線が、いつでもどこにいてもつながるコミュニケーション基盤の整備は、働き方改革を進める上でも重要なポイントになります。支社の移転を機に、情報連携の活性化に向けたフリーアドレス導入に取り組んだ會澤高圧コンクリート株式会社は、同時に従来の電話環境の抜本的な見直しを図りました。この取り組みにおいて、どのような成果が生まれたのでしょうか。
【會澤高圧コンクリート株式会社】
1935年の創業より生コン産業の先端を走り続けるコンクリートマテリアルのプロ集団。生コン、コンクリート製品の製造・販売に加え、従来にはない新製品・工法を積極的に開発。独自のビジネスモデルやマーケティング戦略を構築し、従来型メーカーからの脱皮を目指している。
固定電話主体の内線環境がフリーアドレス化の障壁に
「独創 挑戦 誠實(せいじつ)」を旗印に創業よりコンクリート材料の理想に挑み続け、産業と社会の進化に貢献してきた実践の技術集団が會澤高圧コンクリート株式会社(以下、會澤高圧コンクリート)です。同社では現在も先端テクノロジーを駆使した新たなビジネス創出に挑んでいます。これは「従来のコンクリート事業の進め方では熟練の職人が引退し、いずれ人材が不足して現場での作業が回らなくなる。テクノロジーを駆使することで従来の工法を根本的に見直す必要がある」と考えた、會澤祥弘社長からのトップダウンの号令がきっかけになっています。
「天気や温度、湿度の変化などにより発生する生コン品質のばらつきを制御するAI、ひび割れを自然修復する自己治癒コンクリート、3Dプリンタを利用したコンクリート建設などの研究開発を行っています。さらに近年ではオープンイノベーションを推進するため、アメリカのマサチューセッツ工科大学との連携により、バイオテクノロジーやロボティクス、その他にもブロックチェーンなど次世代テクノロジーの社会実装にも取り組んでいます」と語るのは、同社データ戦略室でリーダーを務める碓氷竜大氏です。
このような新たなビジネスの取り組みにおいて、国内48の事業拠点、各事業部門の連携強化が必須条件だったと碓氷氏は明かします。
「札幌支社の移転を機にフリーアドレスを導入し、ITツールを駆使して働き方改革に取り組むという構想がありました。その狙いは、部署を横断した社員間はもとより、顧客やパートナーとのコラボレーションを活性化することで一層の競争力強化を図ることでした。そこで懸案になったのがオンプレミスで運用していた電話環境です。建設業という職業柄、社員が現場に出向くことが多く、自席の電話ではなかなかつかまらない状況が起きていました。さらに現場の会社貸与スマホと事務所間で連絡を取り合うケースも多く、通話コストがかさんでいました。これらの問題を解決するために、ロケーションフリーでつながるスマホの内線化を検討したのです」
移転先の札幌支社でフリーアドレスを導入するためにも、スマートフォンを内線化することはマストの条件でした。しかも既存の電話環境は老朽化しており、運用面でも課題があったと碓氷氏は振り返ります。
「10年以上前に導入されていた古いPBX(構内交換機)が使われていて、独学ながらこつこつとメンテナンスをしていました。しかし少人数体制で、電話と社内ネットワーク、パソコンのインストール、設定作業、ソフトの管理、さらには社内プロジェクトの開発要件に取り組むのは厳しいものがありました。まずは老朽化したPBXに関する業務を外に出すことが、そもそもの検討のきっかけでした」
電話環境に付随する“守り”の運用業務を外部委託し、経営戦略に資する“攻め”の開発業務にリソースを集中させることも、働き方改革とともに重要なミッションとなっていたといいます。
スマートフォンの内線化を軸に働き方改革を推進
同社は、働き方改革を加速する新たな電話環境づくりに向けたパートナー選定を開始。従来のオンプレミスのPBX事業者に加え、複数のクラウドPBX事業者の提案を比較検討した結果、NTTコミュニケーションズを選定。クラウド型PBXサービス「Arcstar Smart PBX」の導入を決断します。
Arcstar Smart PBXは、クラウド上にあるIP電話サーバーでPBX機能と内線機能を提供。PBXやビジネスホンのクラウド化により設備・保守コストを削減し、スマートフォンやPCなど多様なデバイスでロケーションを問わず無料で内線電話を利用できるサービスです。アプリをダウンロードするだけでスマートフォンを容易に内線化できることも大きな魅力となっています。
碓氷氏は、サービス選定の理由を次のように語ります。… 続きを読む