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読売新聞社がOffice 365で目指す、創造性を高める「働き方改革」とは
2019.06.26

働き方改革&生産性向上のカギはどこにある?第9回

読売新聞社がOffice 365で目指す、創造性を高める「働き方改革」とは

著者 Bizコンパス編集部

 世界屈指の新聞普及率を誇る日本。新聞は、強い影響力を持つ社会の情報インフラです。しかし、スマートフォン、タブレットなど近年のデバイスの多様化によってデジタルメディアが台頭し、近年、新聞の販売部数はゆるやかな減少を続けています。そのような状況の中、新聞各社は、新たな収益モデルの創出に注力。業務インフラのデジタル・トランスフォーメーション(DX)によって定型業務を効率化し、社員が高い生産性とやりがいを発揮できるイノベイティブな時間創出を目的とした「働き方改革」に注目が集まっています。

 業界最大手の読売新聞社のDXの課題は、報道に関する膨大な機密情報や個人情報を扱うメディア企業として「高度なセキュリティ」と、時間と場所にとらわれず迅速に業務を進められる「利便性」を両立させることでした。社内での議論を重ねた結果、オンプレミスのメールシステムを中心とするITツールを、クラウドサービスのMicrosoft「Office 365」へ刷新・再編することを決断。従来と同水準のセキュリティを担保しつつ、国内外300以上の取材拠点、6500台に及ぶ端末でのアプリ・環境変更を、1年という短期間で達成しました。

 同社はどのようにして、それを実現したのでしょうか。カギは、確かな方法論に基づいた導入プロセスにありました。

【読売新聞グループについて】

 読売新聞グループは、140年以上の歴史を持ち、世界最大の発行部数を誇る読売新聞を中心に、文化、スポーツ、レジャーなど多様な分野で事業を展開する。読売新聞は伝統に基づく充実した報道、明快な主張を強みとして、近年は「読売新聞オンライン」などのデジタルサービスにも積極的に取り組んでいる。

 

働き方改革のきっかけは、オンプレミスのメールシステム更改

 1874年(明治7年)に創刊した読売新聞は、明治、大正、昭和、平成、そして令和の5代にわたり、歴史を紙面に刻んできましたが、「デジタルメディアの増加で多様化した読者のニーズを満たすため、新聞は変革の時期を迎えています」と、読売新聞東京本社 総務局情報管理委員会事務局の野中武生事務局長は語ります。

「読売新聞が世の中に役立つ存在であり続けるためには、新たな試みに挑戦し続けることが不可欠となっています。古くから取り組んできた教育や医療、文化・スポーツについてのイベント実施や表彰などは、今やすっかり定着しました。

 近年では小学生向けの『読売KODOMO新聞』、10代向けの『読売中高生新聞』の発刊があり、2019年には、読売新聞定期購読者なら追加料金なしですべてのコンテンツが利用できる『読売新聞オンライン』がスタート、そのコンテンツ数は急速に拡大しています。同時に、少子高齢化で労働人口が減少する中で事業を継続的に発展させるためには、業務効率化による社員の生産性向上、優秀な人材確保につながる職場環境の整備も急務となっています」

 しかし、業務効率化のカギとなるITインフラの運用において同社には課題がありました。新聞社は、報道に関する機密情報や個人情報を多く扱うため、システムのセキュリティの担保が不可欠です。同社では、社内のシステムには外部からアクセスできないなど厳格なセキュリティポリシーを定めていますが、それらは社員の業務効率化とは相反するものでした。

「現場に張り付くことが多い記者たちには、社外から必要な業務ができる仕組みを整えていました。しかし、それ以外の部門では社内でないと業務が完結できない仕組みになっていました。営業やイベントなど外出が多い部門でも事後処理のため直帰できない、移動やスキマ時間を活用できないという状況だったのです」

 課題の解決を模索する中で、オンプレミスで運用していた既存のメールシステムに更改時期が迫っていました。同社では、記事の編集作業から、拠点間の情報共有、システム管理に至るまで、社内のコミュニケーション手段がメールに集中していました。業務の中軸となるメールシステムの更改を好機ととらえ、2017年に経営管理部門主導で「ITを活用した働き方研究会」を立ち上げます。

 

「現場の声」がITツール再編の決め手に

 同社では、部門、部署ごとにコミュニケーション基盤の個別最適化が進んでおり、組織内の情報連携は、メールの流量に比例して濃淡がある状態だったといいます。研究会では約半年をかけて、さまざまな部門の社員からメールやポータルサイト等のITインフラや働き方に対する要望を集め、IT部門を交えて議論が行われました。

 当初、IT部門では、長年の投資によって強固なセキュリティ対策を実現している既存の環境を継続したい意向がありました。一部の基幹系システムの連携にもメールが使われていたため、更改まで1年に迫っているというタイミングを踏まえると、セキュリティ対策が十分にとれないと考えたためです。

 しかし、研究会を通じて現場の社員から「メールで保全できる容量が少なく、重要なデータの管理に手間がかかる」「部門横断での情報の連携がやりにくい」といった当時のシステムへの改善要望に加え、「PCの外部持ち出し、社外からのアクセス禁止といった環境を変えてほしい」という声が多くあがりました。また、複数のメールソフトやチャットなどを使っていて、コミュニケーションツールが組織として必ずしも統一されていませんでした。

 そうした声を汲み取り、たどり着いたのが… 続きを読む… 続きを読む

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