「働き方改革」を推進していくためには、在宅勤務や生産性向上につながるリモートワーク環境の整備は、欠かせないものと言えるでしょう。
しかし、クラウドを活用したリモートワーク環境を構築する際、既存のネットワークインフラのままでは、大きな問題が生じる恐れがあります。どうすれば解決できるのでしょうか。
総労働時間が減っても、仕事量は同じ。どうする?
2019年4月から順次施行されている「働き方改革関連法案」において、重要なポイントとなっているのが「時間外労働の上限規制の導入」(中小企業は2020年4月から)と、「年次有給休暇の確実な取得」です。
時間外労働については、従来上限は定められていませんでしたが、今回の法改正で月45時間、年360時間を原則とし、特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満などといった形で上限が定められました。さらに年次有給休暇については、10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、毎年5日間、時季を指定して有給休暇を与えることが義務づけられています。
従業員としてのワークライフバランスの改善を考えたとき、このような法改正は追い風となるでしょう。しかし、会社全体の視点で見ると、総労働時間が減少することにもなりかねません。
とはいえ、現在は人手不足が常態化していて、新たに人を確保するのは容易ではありません。これまでの働き方や業務環境を改めなければ、業務効率の向上を果たすことも難しいでしょう。
こうした課題を解決する手段の1つが、リモートワークです。リモートワークによって在宅勤務を行えば、育児や介護などでオフィスへの出勤が難しい人でも、働けることになります。さらに、外出や出張時でもオフィスと同様に業務を遂行することも可能となります。
リモートワークをするための環境は、クラウドであればかんたんに整備できます。たとえばマイクロソフトの「Office 365」のようなクラウド型のグループウェアであれば、インターネット回線さえあればどこでも利用できます。自宅や外出先からでもメールを送受信したり、文書ファイルや表計算ファイルの作成が可能です。
便利なリモートワークの“落とし穴”
しかし、こうしたクラウドサービスを全社的に使用する場合、大きな課題となるのが、各オフィスとインターネットゲートウェイを結ぶネットワークの「帯域」です。
たとえば拠点が複数ある場合、それぞれの拠点からインターネットにダイレクトに接続するケースは稀です。一般的には、データセンターなどに設けたインターネットゲートウェイ(インターネットとの接点)を経由します。拠点とインターネットゲートウェイは、クローズドVPNなどを使って接続します。
このようなネットワーク構成でクラウドサービスの利用が増えると、拠点とインターネットゲートウェイ、あるいはインターネットゲートウェイとインターネットを結ぶネットワークに、多くのトラフィックが流れ込むことになります。これが、回線の帯域幅を圧迫し、その結果、「ネットワークが遅い」「クラウドサービスのレスポンスが悪い」といったトラブルが発生してしまうのです。
帯域が圧迫しているなら、開ける方法がある
この「帯域幅の圧迫」問題を解決するためには、いくつかの方法がありますが、手早く解決するのであれば「ローカルブレイクアウト」が最適です。
ローカルブレイクアウトは、Office 365へのアクセスなど、特定の通信については拠点からダイレクトにインターネットに接続します。それ以外の通信は、従来どおりインターネットゲートウェイを使うといった制御を行い、トラフィックの分散を図ることで、帯域幅の問題を回避するというものです。安全かどうかが判断できないトラフィックについては、従来どおりインターネットゲートウェイを使うため、セキュリティレベルが落ちる心配もありません。
このローカルブレイクアウトを実現するための技術が、「SD-WAN」というものです。SD-WANはソフトウェアによるネットワーク制御を行い、トラフィックに応じて通信経路を変えるなど、ネットワークの柔軟なコントロールを可能とします。
たとえば、NTTコミュニケーションズの「Software-Defined Network Service (SD-NS)」は、このSD-WANを実現するサービスの1つです。ローカルブレイクアウトはもちろん、クローズドVPNである「Arcstar Universal One」とインターネットVPNを使った通信の振り分け、トラフィックの可視化もできます。
リモートワーク環境から、各クラウドサービスやオンプレミスのシステムへ安全にアクセスできる環境を整えるのであれば、アカマイの「EAA(Enterprise Application Access)」もあります。
EAAを利用してリモートアクセスする場合、ユーザーはまずクラウド上の「EAA Edge」に接続、ユーザー認証を行い、許可されればそのユーザーが権限を持つアプリケーションへ接続できます。オンプレミスのアプリケーションにも接続が可能なうえ、アプリケーション単位でリモートアクセスを制御することが可能です。
「クラウドの導入で、働き方改革を推進しよう」と考えている企業やすでに実行している企業は多いでしょう。ですが、多くのスタッフがクラウドサービスを使うことで、逆に不便になってしまうこともあります。
もし、クラウドの反応の遅さに気になったら、その原因が「帯域」であり、ここで挙げたような解決策がすでに用意されていることを、思い出してみてください。