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いま、なぜ東南アジアベンチャーと日本企業がコラボする必要があるのか?Startup Challenge Summitレポート
2019.05.15

新たなイノベーションはアジアから始まる第3回

いま、なぜ東南アジアベンチャーと日本企業がコラボする必要があるのか?Startup Challenge Summitレポート

著者 Bizコンパス編集部

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、2017年より、アジア地域のスタートアップ企業(ベンチャー企業)と日本の企業のマッチングを目的としたピッチイベント「NTT Com Startup Challenge」を開催。これまでに、インドネシア、マレーシア、ベトナムの3カ国で実施しています。

 2019年3月13日、その3カ国のイベントで上位に入賞したスタートアップ企業9社を招いたピッチイベント「NTT Com Startup Challenge Summit」が、東京・大手町で開催され、日本の地で、あらためて東南アジアのスタートアップ企業のアイデアが競われました。

 当日はピッチイベント以外にも、早稲田大学准教授の入山章栄氏による講演や、審査員を務めるKK Fund共同代表者のKuan Hsu氏と、経済メディア「NewsPicks」のチーフアジアエコノミストである川端隆史氏の対談も行われました。

 今回は、このNTT Com Startup Challenge Summitの様子をレポートします。加えて、ピッチイベントに参加したスタートアップ企業、および参加した日本企業の出席者に、双方の国でコラボする意義に関するインタビューも取り上げます。

 

東南アジアのスタートアップ企業は、日本に何を求めているのか

 ピッチイベントに参加したのは、インドネシア・マレーシア・ベトナムの3カ国から選ばれた各3社、合計9企業。各社が自社のサービスやアイデアをプレゼンテーションしました。

 このピッチセッションにおいて、最も優れたものに贈られる「ベストピッチ賞」を獲得したのが、旅行情報を本人の同意の下でパートナーに提供し、見返りとして旅行者にトークンやクーポンを提供する「情報銀行」というビジネスをしている、ベトナムのTriip Pte. Ltd.(以下、Triip)です。

 同社CEOのHai Ho氏は、このサービスを開発した理由として、GAFAによる個人データ独占の開放だといいます。

「日々私たちが検索ポータルで検索している情報は、その検索ポータル企業が広告出稿者向けに利用し、自社利益を得ています。しかしながら、データを提供した個人になんら還元されていません。

 それを解決するために、個人が旅程や現地での行楽地のアクティビティ情報をTriipのプラットフォームを通し、パートナー(旅先付近のホテル、レストランなど)に提供した見返りに、トークン(ポイント還元のような代用貨幣)などを発行する仕組みを考えました。これにより、情報提供者も恩恵が得られます」(Hai Ho氏)

 しかし、なぜHai Ho氏は、日本企業のピッチイベントに参加したのでしょうか。

「大手の日系企業であれば、一緒にアイデアを考えてくれるのではないかという期待がありました。ビジネスをスケールアップすることに長けている印象があり、そのノウハウを吸収できることも一緒にできるメリットと考えました」(Hai Ho氏)

 Triip のプラットフォームがブロックチェーン技術で構築されている点も、イベント参加の一因になったといいます。

「Triipにブロックチェーンを採用したのは、前述の通り、GAFAのような大手企業が一元的にデータを集めて利益を独占するのではなく、多くの企業がデータにアクセスしてシェアできる環境を作りたいと思ったからです。

 ブロックチェーンと仮想通貨の技術に関しては、日本は世界1、2のポジションにいると考えており、学ぶところが多いと期待しています。日本では仮想通貨関連のレギュレーションとルールがクリアであることも魅力です。アメリカは制度面が不明瞭で不安ですが、日本は明確でやりやすいと感じています。

 日本市場は、(海外の企業にとって)閉鎖的な市場だと思います。しかし、継続して事業を続けられれば、勝機があると思います。我々は継続的に日系企業にアクセスしたいと考えていましたが、すでにNTT Comには日系企業とのマッチングを支援してもらっているので、その点において我々の望みはすでに実現しています」(Hai Ho氏)

 

IoTの普及で“モノの時代”が訪れれば、日本にもチャンスが来る

 ピッチイベントに先がけて、早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授である入山章栄氏による基調講演も行われました。

 入山氏によると、東南アジアのスタートアップに関心を寄せている日本企業は多く、2017年には日本から海外への投資件数において、東南アジアが中国を上回ったといいます。

「たとえば、インドネシアのユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場、設立10年以内のベンチャー企業)として注目を集めるPT Bukalapak.comのリードインベスター(最大の出資者)も、日本のベンチャーキャピタル(VC)です。日本と東南アジアのスタートアップが結びつく気運は、確実に高まりつつあります」(入山氏)

 日本企業が東南アジアのスタートアップに出資することで得られるメリットとして、入山氏は「イノベーション」を挙げました。

「イノベーションの第一歩は、新しいアイデアを生み出すこと、何かの種を見つけることです。そのアイデアを生み出すために何が必要かというと、“今ある既存の知”と“別の既存の知”の新たな組み合わせにより“新しい知”を生み出すことです。

 つまり、すでに世の中にあるけれど、まだ組み合わされていないもの同士が組み合わされることで、新しい知が生まれるのです」

 入山氏は、この “知”の組み合わせ方が、イノベーションを起こすためには重要としています。

「イノベーションを起こすためには、なるべく自分から離れた遠くにある知を探し出し、自分が持っている知と組み合わせることが重要です。これを『エクスプローション(Explosion)』と呼びます。ですが、日本企業はエクスプローションよりも… 続きを読む… 続きを読む

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